自民の新たな火種「戦後80年談話」に渦巻く"疑念" 保守派の抵抗は必至、それでも石破首相は邁進

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これを受けて、1月31日の衆院予算委員会で立憲民主党の長妻昭氏から「国として太平洋戦争などの検証をするのか」と問われた際、“政治の師”と仰ぐ故・田中角栄元首相が「戦争体験者が国の中心からいなくなるときは怖い」と述べたとされることを紹介したうえで、「(検証するためには)今年は極めて大事だという認識を持っている」と80年談話発出への意欲をにじませた。

これに関連して、広島県出身の斉藤鉄夫・公明党代表は、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞受賞に絡めて「被爆者の声が世界規範となった。戦後80年、被爆80年という節目に談話は出すべきだ」と石破首相の背中を押す。

これに対して自民党内では、若手保守派の小林鷹之・元経済安全保障担当相が「出す必要はまったくない。そのための70年談話だ」と、安倍談話“更新”への反対を明言。党内保守派の代表格と目される高市早苗・前経済安保相らも、小林氏に加勢する構えをにじませる。

最大の問題は談話発出時の「石破内閣の存否」

国内外に波紋を広げた「安倍談話」から10年となる今年は、「戦後80年に加え、昭和100年にも当たる節目の年」(有識者)でもある。それだけに、総裁選などで安倍氏と対立を続けた石破首相が談話発出の本格検討を進めれば、「その内容が内外で注目されることになる」(同)ことは間違いない。   

そこで問題となるのが「今後の石破政権の命運」だ。そもそも、与党が衆議院で過半数割れしている状況下では「石破政権がすんなり夏を迎える保証はない」(自民党幹部)ことに加え、「石破氏が政権維持を懸けて勝負するつもりの『夏の政治決戦』の前に、政局絡みの重要日程が目白押し」(政治ジャーナリスト)だからである。

具体的には、①国会会期末の野党による不信任決議案の提出、②12年に1度となる東京都議選挙と参院選の同時期実施、③状況次第で衆参ダブル選挙もありうる、という状況を指す。

こうした状況も踏まえ、永田町関係者の間では「首相談話が政局と絡むのは国民にとってもよくないが、政治日程上、政局と関係せざるをえず、その中で石破首相にとって『出さない』という選択肢はなくなり、逃げ道のないのが悩み」(政治ジャーナリスト)との見方が広がる。

その一方で、自民党幹部からは「石破首相は党内の旧安倍派を軸とする保守系グループを意識しないわけにはいかず、安倍談話を大幅に書き換えることは難しい。ただ、それでは石破談話の存在意義もなくなるため、党内的には石破首相は八方ふさがりだ」(閣僚経験者)と指摘する向きが少なくない。

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