「もう1人産みましょう」にあまり効果はない…日本の出生数が過去最小になった「本当の原因」

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変わったのは若者の結婚や恋愛に対する意識ではなく、結婚がコスト化したという環境変化の方です。結婚に必要なお金という意識のコストが高騰しているですが、皮肉なのは、物価高のように実態として結婚コストが上昇しているのではなく、あくまで意識のインフレであることです。いわば「老後に何千万円必要」のような「今心配したところで仕方ない」虚構の意識コストです。

30年間手取りが増えていない実情に加えて、結婚に必要な意識コストだけが上昇し、経済上位層を除く若者には手の届かないものになってしまった。かつては、経済的なことなど深刻に考えず結婚できていた中間層の若者が「結婚の経済条件」を真っ先に問われるようになり、結婚も家族を持つことも意識上の贅沢品と化してしまいました。結果、結婚の希望があっても未婚のままという不本意未婚だけが増加しているのです。

中間層の20代が結婚できていない

国民生活基礎調査から、20代で児童のいる世帯の2003年から2023年までの年収分布を見ると、それが如実に表れています。

20代で結婚をし、子どもを持てる年収は2003年も2023年も400万円台が最頻値ですが、その絶対数は70%減という激減ぶりです。それだけ中間層の20代が20代のうちに結婚もできず、子どもも持てなくなっているということです。何より、2003年から2013年ではそれほど減ってはいないのに、直近の10年で急激に減りました。一方で800万円以上の上位層ではこの20年間まったく世帯数が減っていません。

もちろん、初婚が減ったことの要因すべてが経済的要因ではありまんが、減っている初婚は年収中間層だけであるという事実はもっと深刻にとらえるべきでしょう。中間層の若者が経済的な不安なく毎日を過ごせるという土台こそが、真の少子化対策なのではないでしょうか。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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