セレナ4WD｢車酔いしにくさ｣を強調する理由 新登場｢e-4ORCE｣に見た日産らしいこだわり

それでも「なんとかドライブに連れていけないか……」という声があったという。しかし、犬を実験に使うのは動物福祉の点で問題がある。そこで、人間の「酔いにくさ」を追求したというのだ。

日産のいうような「頭の揺れ」の少なさを実感できた（写真：日産自動車）

実際に体験してみると、たしかにぞんざいにアクセルペダルを踏み込んだり離したりしても、横の線を中心に車体が上下に揺れるピッチングが起きていない。モーターの強い前後Gを特にシートベルトが触れている胸部に感じるが、それは運転の仕方で解決できる。

日産役員がセレナでドリフト体験

現行セレナのシャシーの基本は、先代からのキャリーオーバーだが、先代でe-POWERを搭載したときにフロント部分を再設計している。

さらに今回は、リアにバッテリーとモーターを積むため、リアフロアとリアサスペンションを新設計。「結果、ほぼ新設計となりました」と、開発者は言う。

プラットフォームはキャリーオーバーだが、前後のフレームは新設計（写真：日産自動車）

「e-4ORCE技術は、前後モーターとブレーキの統合制御で、4輪の駆動性をフルに生かします。しかも、セレナ e-4ORCEは前後輪の重量配分がほぼ1対1なので（バランスもよく）ドライ路面でもアクセルペダルを踏み続けたままコーナーを回っていけるよう設定しています」

開発エンジニアは自信たっぷりにそう語る。

驚くのはセレナ e-4ORCEの完成後、日産自動車の役員をテストコースに集めたということ。オーバルの外周路とハンドリング路に加え、ドリフト走行体験まで実施したのだそうだ。

「皆さん、ドリフト走行を楽しんでくれました。e-4ORCEのポテンシャルの高さを理解してもらえたと思います」と、足まわりの担当者は胸を張る。

今回は雪上試乗会だったため、オンロードでの走行は未体験だが、話を聞いているかぎり、スポーツカーのようでもある。オンロードでステアリングホイールを握る日が、楽しみになるではないか。

1997年に発売した大型ミニバン（へんな言い方）の「エルグランド」を思い出した。第1世代（1997年）と第2世代（2002年）は、後輪駆動。

トヨタ初代「アルファード」と同時期に誕生した第2世代「エルグランド」（写真：日産自動車）

プラットフォームを他モデルと共用するとか、内部の事情もあっただろうが、スポーティーカーでおなじみの後輪駆動による操縦感覚が、全高が1.9mを超えるエルグランドでも強調されていた。

競合他社では作らない、というか、いろいろな意味で作れないクルマを手がけてきたのが、日産だったと思い当たった。

酔いにくく、長い距離を走っても疲れにくい。一方、ドライバーは運転を楽しめる。そこまでいうミニバン、今までなかったんじゃないか。

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