「15cmの深雪からでも、ゆとりをもって脱出できる」という日産の説明どおりで、除雪していない道を走るのが、むしろ楽しみになるほどだった(といっても、そういう道は避けるのが賢明)。スキー場などでは、ありがたいだろう。
e-4ORCEでは、フロントモーターの315Nmと、リアモーターの195Nmというトルクを使う。後輪にしっかりとトルクをかけられることが重要で、同時に4輪の駆動力制御技術も要となる。
「機械式4WDや(一般的な)ハイブリッド車のモーター4WDでは、前輪の空転を感知してから後輪を駆動するため、発進に遅れが出がちですが、e-4ORCEでは、アクセルペダルを踏むだけで一瞬の遅れもなく進んでいきます」という先のエンジニアの言葉どおり、雪が積もった北海道の路上で、セレナ4WDの性能ぶりに感心した。

日産は、ほかの4WDシステムと性能比較した一覧を示してくれたが、そこにはカーブを曲がるときの性能も、セレナ e-4ORCEは大きく競合車を引き離す、とされていた。
ポイントは「頭部の揺れを防ぐこと」
現行セレナが発表されたとき、日産の技術者は「乗りもの酔いしにくい」ことを、大きなセリングポイントにあげていた。
乗りもの酔いのメカニズムは100%解明されているわけではないようだが、乗員の「頭部の揺れを防ぐこと」がかなり有効とのことで、セレナでは前後サスペンションの動きを制御。
加減速時にアクセルペダルの操作をややぞんざいにすると、車体の前あるいは後ろが持ち上がり、それが乗員の頭を揺らすものだ。セレナでは、駆動力を制御しやすいモーターの特性を生かして、車体の揺れを抑えるのに成功しているという。

特にe-4ORCEモデルは、前輪に加えて後輪も積極的に制御できるため、頭部の動きを抑える制御がより緻密なのだそう。減速時の前後の動きだけでなく、カーブ時の左右の傾きにおいても「酔いにくさ」が向上しているという。数字にすると、それぞれ10%の改善とのことだ。
「本来は犬を乗せたときに酔いにくさを目指したんですけどね」とは、現場で教えてもらった裏話だ。犬を飼っている人はご存じのように、人間よりも酔いやすい。
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