フィリピンに渡った「丸ノ内線車両」の意外な役目 現役当時そのまま、2両の「02系」今どこにある?
「鉄道人材の育成需要は今、フィリピンで非常に高くなっている」と語るのは、同大学理事長のフランシスコ セゴビア氏だ。現在、同国では日本の円借款も用いて建設の進む南北通勤鉄道(約150km)、そしてマニラ地下鉄(約33km)を筆頭に大規模鉄道プロジェクトが目白押しで、10年間で1万5000人が必要になるとも試算されている。
政府は運輸省の付属機関として「フィリピン鉄道訓練センター(Philippine Railways Institute :PRI)」を設立し、鉄道事業者の既存・新人社員教育をスタートしている。
同大学の実践と理論を組み合わせた教育手法は、即戦力かつ将来の幹部候補としてフィリピンの鉄道業界の現場で活躍できる人材育成に適しており、同大学の教員がPRIで講義をしたり、逆にPRIが同大学のラボラトリウムで講座を開いたり、学生をインターンシップで受け入れたりと連携を強めている。

なぜ「丸ノ内線02系」だったのか
では、なぜ02系が譲渡されることになったのか。
同大学は東京メトロのほか、フィリピンのLRT事業者や香港MTRアカデミー、シンガポールSMRT、イギリスの鉄道インフラ建設・保守会社のコーラスレールとも連携しており、学生が業界に触れる機会として、担当者を招いてセミナーを開催するなどしてきた。
そのような経緯から、実物の車両を教材として設置したいという大学側の意向がまずあった。
一方の東京メトロ側はどうか。同社国際ビジネス部課長(フィリピン/ベトナム)の谷坂隆博氏によると、2018年にPRIプロジェクトがスタートした際、同プロジェクトを東京メトロが支援していることをきっかけに、大学側から鉄道コースを開講したいというコンタクトが同社にあった。その話の中で、ちょうど余っている車両があるからどうですか、という流れになったという。

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