ついにアメリカと欧州の「文化大戦争」が始まった ヴァンス副大統領演説の衝撃度は計り知れない

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かくして、毎日のようにトランプさんがトップニュースを飾り、何があったかを記憶するだけでもひと苦労である。これらの中で、「歴史の年表に残るような事件」をひとつだけ挙げるとしたら、それは「2月14日、ヴァレンタインデーにおけるJDヴァンス演説」だったのではなかったかと筆者は考えている。

ヴァンス演説は「米欧関係の終わりの始まり」に?

ちょうど第1期トランプ政権において、マイク・ペンス副大統領が2018年10月に、ワシントンのハドソン研究所で行った「反中演説」という前例がある。「アメリカの対中認識はここまで悪化しているのか!」と反響を呼び、「米中貿易戦争」を決定づけるものとなった。今回のヴァンス演説も、「米欧関係の終わりの始まり」を告げる転機と後世で位置づけられるのではないだろうか。

しかも第1期政権におけるペンス氏は、「次期大統領」とはほとんど目されていなかった。その点、第2期におけるヴァンス氏は、2028年にはわりと高い確率で「ポスト・トランプ」候補ということになるだろう。そのヴァンス氏が、おそらくは自分自身で何度も手を入れた原稿を、欧州首脳たちの前でいつもの早口でまくしたてたのである。

ミュンヘンを訪れたヴァンス氏は、オラフ・シュルツ首相とは会うこともなく、野党であるAfD(ドイツのための選択肢)のアリス・ヴァイデル共同党首とは会談した。さらに1月25日には、イーロン・マスク氏がAfDの選挙イベントにリモート出演して同党への支持を訴えている。トランプ政権が、丸ごとドイツの右派勢力を応援している形である。

そして2月23日に行われたドイツ総選挙では、AfDが議席を倍増させて第2党に躍進した。シュルツ氏が率いるSPDは第3政党に転落したが、これは第2次世界大戦以降では初めての屈辱である。

そして第1党には最大野党のCDU(キリスト教民主同盟)が返り咲き、フリードリッヒ・メルツ党首が次期政権を担うことになった。しかるにAfDを政権に入れるわけにはいかず、連立交渉はSPDとの大連立がほぼ一択ということになる。議席数は両党合わせて過半数をわずかに超える程度であり、政権運営には苦労しそうである。

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