一方で、東洋大学では、実質的には一般選抜の前倒しと批判される学校推薦型で2万人の志願者を集めており、この影響は少なくない。この試験の受験者の中でどのくらいが滑り止めとして受験しているかだ。
東洋大学よりも志望順位の高い大学から合格通知が届くまでは、東洋大学に籍を確保しておきたい受験者もいるだろう。もちろん東洋大学も上位大学に合格者を抜かれることを見越して合格者を多めに出しているだろうが、初めての試みゆえに動向を読めない。
東洋大学の一般選抜の合格者数にも影響するだろう。東洋大学が他大学への迷惑を考えて自重すればいいが、定員割れは困るので欠員が多く出れば追加合格を出さざるをえない。追加合格の動向によっては、東洋大学の併願先となっていた志望順位の低い大学はせっかく確保した入学予定者を引き抜かれてしまう。
そして、その東洋大学に入学予定者を引き抜かれた大学も追加合格を出してほかの大学から入学予定者を引き抜く。これが続くと3月31日までに無事に入学者を確保できるか、気が気でない大学も出てくるだろう。
2025年度、2026年度の大学入試は、人口減が再び始まる2027年度以降に向けた大学の生き残りの篩(ふるい)になる。18歳人口が減らないにもかかわらず、募集が改善されないのだから2027年度以降は定員充足がかなり厳しくなる大学も出てくる。
「大学教育にふさわしい準備ができているか」
また、入学者を8割以上確保した大学であっても、入試の難度はいかがなものだろうか。合否のボーダーラインを引けない「ボーダーフリー」になっていることだろう。「全入化」ゆえに、出願者は全員合格となり、不合格者を出せない大学もいずれ登場することになるだろう。そうした大学では申し込み順に入学者を受け付けることになるのだろうか。いや、そうではないだろう。
どのような状況であったとしても、大学入試の元来の目的である「大学教育にふさわしい準備ができているか」を審査する必要はあるのではないか。それをいかに審査するか。
高校からの推薦に頼ることは考えられる。そうなったときには、現行の「大学入学者選抜実施要項」で定められている「学校推薦型選抜の募集人員は、附属高等学校長からの推薦に係るものも含め、学部等募集単位ごとの入学定員の5割を超えない範囲において各大学が定める」を見直す必要がある。
短期大学同様にこうした制限を取り払い「学校推薦型選抜以外の入試方法における受験機会の確保にも配慮して」募集定員を定めることになるだろう。
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