こんな話もあります。87歳まで生きた一休さんは、亡くなる直前に弟子に手紙を託しました。「本当に困ったことになったら開けなさい」。その数年後、弟子たちが手紙を開けると、そこに書かれていたのは「心配するな、大丈夫、なんとかなる」。皆、お腹を抱えて笑ったそうです。
普通「なんとかなるさ」と言われても、「なんだい、人の気も知らないで」と腹が立つところではないでしょうか。
しかし、一休さんが深刻ぶらずに「心配するな、大丈夫、なんとかなる」と言ってくれたと思うと、目の前があかるく開けた気がしてくるから不思議です。そうして心が軽くなると頭もまわり、「今、何をしたらいいか」を前向きに考え、行動できるようになります。
「いっぱいいっぱい」の時に大切なこと
且緩緩(しゃかんかん)という禅語があります。且(しゃ)は「とりあえず、しばらく」、緩(かん)は、「ゆっくり、のんびり」の意味です。もともとは、早く悟りを開こうと焦るあまり質問ばかりしてくる弟子に師がかけた言葉だと言います。
私たちも、その弟子と同じような状況に置かれてはいないでしょうか。
私たちは日々、多くのタスクに追われています。目標に向かって走り続け、仕事に家事に勉学にと、早く結果を出そうともがいています。
しかし、そんな日々をいつまでも続けられるものではありません。「急いては事を仕損じる」のことわざどおり、何事もあせるとミスが多くなります。それに、一息つく時間さえ失われると、自分の生き方を振り返り、今ここにある幸福を味わう機会すら奪われてしまうでしょう。
「ああ、なんだかいっぱいいっぱいだな」
「大事なこと、忘れてないかな」
そんなときにつぶやいてみてください。「しゃかんかん、しゃかんかん」と。
そうして「ま、どうにかなるだろ」という気がしてきたら、目を閉じてふーっと深呼吸。
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