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スペイン「行列ができる和菓子店」オーナーの正体 YouTubeと本で日本食を学び、マドリードで起業

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石原さんの和菓子には、スペインと日本、2つの文化の狭間で揺れ動いた少女の記憶と、姉との大切な思い出が込められている。それは単なるスイーツではなく、文化と記憶を伝える媒体となっているのだ。

繊細で芸術的な和菓子職人の技とは異なる、家庭的な温かみのある和菓子。それがトンボの特徴だ。チョコレートの原価が5倍に跳ね上がっても、素材へのこだわりは変わらない。

お菓子はすべて一人で作るため毎朝5時に起きて準備をしている(撮影:アルベルト・オリバレス)

「収入は生活できるだけあれば十分」

最近ではお菓子ではない、新たな商品も投入した。

「おにぎりも始めました。『何これ?』と驚かれますが(笑)。中身は梅干し、ツナマヨ、たくわん。スペイン人には圧倒的にツナマヨが人気ですね」

メニューのラインナップを増やすつもりはないが、少しずつ新しい挑戦をしていきたい、と石原さんは意気込む。

「今後は、メロンパンや小学校の給食で出てきたようなコッペパンなども作っていきたいです。将来的には2カ月ほど店を閉め、日本で技術を磨く時間も作りたい。お客様との会話を楽しみながら商売をする。それが私の理想です」

「収入は生活できるだけあれば十分」と石原さんは笑う。

多忙を感じたとき、石原さんは店から徒歩5分の海沿いを歩き、ベンチに腰かける。かつてここで療養生活を送った姉の姿を思い浮かべながら。

「えりか(姉)もこうやってベンチに座ってこの景色を眺めていたのかな。そう考えると、この街に来て、『トンボ』を立ち上げたこと、何よりも今のトンボの形を作れたことが誇りに思えるんです」

そこには、大規模展開や売上至上主義では得られないであろう、確かな手応えがあった。

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