スペイン「行列ができる和菓子店」オーナーの正体 YouTubeと本で日本食を学び、マドリードで起業

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「私が作っていた料理にはほとんどグルテンが含まれていました。姉が食べられないのは嫌だな、と思い、それなら姉が気にせず食べられるものを作ろうと決意したんです」

レストランで「グルテンフリー」を謳うには、「FACE(スペインセリアック病協会連盟)」の認定所得が必須。それは、想像以上に過酷な挑戦だった。

「実際、レシピを改良し始めてみると、とんでもないことに手を出してしまったと思いました。醤油やたこ焼きソースなど、使用していた調味料すべてをグルテンフリーの自家製に切り替える必要があったのです。もう、必死で勉強しました。言ったからには、最後までやり抜こうと決めたんです」

オカシサンダ時代の石原さん(写真:Tombo)

改装工事期間の1年間、石原さんはレシピ開発に没頭した。トライアンドエラーの日々は、1年で13キロの体重減少という形で表れた。

努力の末、1年後には「FACE」の認定を取得。スペイン初のグルテンフリー日本食レストランとして、メディアの注目を集めた。

しかし、注目度が増す一方で、石原さんの心には「不安」が静かに広がっていた。

成功の裏で深まった孤独

「独学で始めた分、これでいいのかという不安は常にありました。どれだけ売れようが、独自のやり方に自信を持てないでいたんです」

石原さんは負のスパイラルに陥っていた。パートナーとの関係も悪化し、従業員への給与支払いやレストラン拡大への焦りが日増しに募っていく。何か対策しなくてはーー。石原さんは現状を打開するため、再び行動に起こすことを決意する。

2018年、35歳の頃。レストランの料理レベルの向上を目指し、パートナーに店を任せ、バスク地方の4年制調理専門学校バスク・クリナリー・センターで博士課程を修得することにした。スペインではどこで何を学んだか、が重要視される。その価値観の中で、独学というコンプレックスを埋めようとしたのだ。

平日は学校で学び、週末は4時間半かけてマドリードへ戻り、レストランを手伝う日々を送った。姉もまた、療養のため自然豊かなサンタンデールへ移住し、電車で4時間をかけ、店を訪れていた。

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