成績が悪い人ほど「自分はできる」と思い込む滑稽 逆に能力が高いと自分自身を「過小評価」しがち

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『バカの壁』では、価値観そのものを一元論(正しいことは1つしかない、という思い込み)から多元論(正しいことはいくつもありうる)に変えなくてはいけないと結論づけられています。

とはいえ人間の価値観の問題となると、難しい点もあります。誰かの価値観を変えることは簡単ではないからです。

ただしこれが「ダニング=クルーガー効果」によるものであれば、変えられるかもしれません。「バカの山」に登っている人は自分で気づいていませんが、時間が経つことで理解できる可能性があるからです。

こうした心理を理解して、相手の自己判断が変わるのを待つことは有効です。もちろん、そこにかかる時間は人によって異なりますから、ある程度、忍耐も必要でしょう。

自分が今「どの段階にいるのか」を分析する

重要なのは「根本的な価値観の問題」なのか、それとも「一時的な自己判断の誤り」なのかを見抜くことです。

『世界は行動経済学でできている』(アスコム)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

自分と他者との位置関係を客観的な視点で見極めるのは難しいものです。私たちがしばしば「バカの山」に登ってしまうのも仕方がないのでしょう。

しかし、そこで自らが「ダニング=クルーガー効果」に影響されている可能性をふまえて、できる限り冷静に自己を見つめることは重要です。そこから真の自分の強みを見つけることもできるはずです。

また誰もが、うまくいかなくて自信をなくしたり、自分を見失ってしまったりすることもあります。そんなときは、先ほどの「曲線」で自分が今どの段階にいるのかを分析するのもいいでしょう。

「絶望の谷」にいると思うなら、もう「バカの山」はクリアしているのですから、あとは継続しながら少しずつ、確実に上に登って行くだけだと思えれば、自信につながります。人間の心理的バイアスを知ることは、他人を理解することはもちろん、自省や自己のさらなる成長にもつながるのです。

橋本 之克 マーケティング&ブランディングディレクター

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はしもと ゆきかつ / Yukikatsu Hashimoto

1964年神奈川県生まれ。東京工業大学社会工学科卒業後、読売広告社、日本総合研究所を経て、1998年アサツー ディ・ケイ入社。環境エネルギー、金融、住宅、消費財のマーケティングや広告の戦略を策定。著書に『9割の人間は行動経済学のカモである』(経済界)などがある。寄稿・セミナー講師も多数。宅地建物取引主任者。
 

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