「パワハラが生まれやすい職場」に顕著な傾向3つ 「個人の問題」とだけ捉えていては解決できない
──構造的メカニズムについて教えてください。
「構造的メカニズム」は、その職場の環境や風土がパワハラ行為者を生み出してしまうというもので、パワハラが起こりやすい職場の特徴であるとも言えます。
代表例として、上下関係が厳しい職場が挙げられます。
上下関係が厳しいと、「こいつは上に歯向かっている」「生意気だ」という主観性によりパワハラ行為がなされてしまいがちです。しかも、立場が上の人間の意見は、どれほど理不尽でも聞くべきという思考を持つ人が多いので、その行為がとがめられることは滅多にありません。
パワハラが生まれやすい職場の特徴
また、恒常的に忙しい職場でもパワハラが生まれやすいことがわかっています。
人は忙しすぎると、どうしても余裕をなくしてしまいます。余裕のあるときは、部下からの質問にも普段どおりの態度で答えているのに、仕事に追われているタイミングで同じような質問をされると、「この前も教えたじゃないか」とイライラして叱責につながってしまいます。
ほかにも、些細なミスや失敗が許されない職場もパワハラが起こりやすいことがわかっています。
この「構造的メカニズム」は、業種別に見たパワハラ発生率の違いにも影響します。たとえば、これらの要件に該当する職場の一例が医療系です。
患者の命に関わるということで、ミスをしたり、作業スピードが遅かったりする人に対する攻撃が正当化されやすい特徴があります。さらに、そういう場面で叱責している人に対して誰もそれを注意しようとしないので、周囲もミスをする人が悪いという認識になりがちです。
このように、構造的にパワハラを抑制する力が弱い、むしろ促進しかねない職場風土や業種の場合には、どうしてもパワハラの発生が高頻度になる傾向にあります。
神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授。東京大学大学院医学系研究科修了。東京大学にて公衆衛生学修士(専門職)、博士(保健学)、和歌山県立医科大学にて博士(医学)取得、2024年より現職。専門分野は社会疫学、精神保健学、行動科学。パワーハラスメントのメカニズムについて研究しており、著書に『パワハラ上司を科学する』(筑摩書房)がある。
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