フランスは「平均44歳」欧州に旧型客車多い事情 鉄道復権で中古需要活発、新車導入も進むか
なぜここまで差が出るのだろうか。これには各国の車両導入のポリシーが反映されている。
最も平均車齢が高いフランスは、1980年代以降都市間輸送においては高速列車TGVが主力となっており、主要都市間を結ぶ長距離列車の多くは客車からTGVに置き換えられた。一方でTGVが運行されていない地方都市間では、1970~80年代に製造された「コライユ型」と呼ばれる客車を使った列車が、現在も主力として運行している。
実はこのコライユ型以降、フランスでは新型の長距離列車用客車は投入されていない。
フランスは、客車列車については基本的に電車やバイモード(電化区間と非電化区間を直通できる)車両などを投入して置き換える方向へ進んでおり、これが他国よりも平均車齢が大幅に高い要因となっている。
だが、2025年1月にフランス運輸大臣のフィリップ・タバロ氏が、政府主導でまもなく夜行列車用の新型客車180両と機関車30両を発注すると語った。実現すれば、実に45年ぶりの新型客車導入となる。
「フェリー輸送」で客車が残るイタリア
次いで平均車齢が高いイタリアも似たような状況にある。現役の客車の中には、1980年代までヨーロッパの花形列車だったTEE(ヨーロッパ国際特急)の時代に製造された車両もあり、車齢50年を超える客車が今も走っている。
一方、主要都市間輸送の多くは高速列車「フレッチャロッサ」をはじめとする電車に置き換えが進んでいる。非電化区間も、日立製のトライブリッド(電気・ディーゼル・バッテリー)車両「マサッチョ」のインターシティ用が投入されつつあり、客車の活躍の場は次第に狭くなっている。
だがイタリアもフランスと同様、夜行列車に新型客車の投入が決まっている。一方でイタリア半島とシチリア島間の航送(フェリーで車両をそのまま輸送する)がある点も、客車列車が残りつづけるであろう要素の1つだ。
フェリーで電車を航送するのは難しく、高速列車フレッチャロッサを積載する計画が持ち上がったこともあったが、技術的な問題で断念したことが伝えられた。航送が残る限り、客車列車の完全廃止へは至らないものと考えられる。
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