自動運転は大都市の「公共交通」どう変えるのか 人手不足が深刻化する2027年までにレベル4実装を目指す
「乗用車の自動運転と比べると、路線バスは走行ルートが固定化されている分、シナリオを作り込みやすい反面、大型車両ならではの制御の難しさがある」と川崎鶴見臨港バスの小杉直氏(運輸部営業企画課長 兼 運行企画課長)は語る。
都県をまたぐため、信号制御の改善に関しては神奈川県警と警視庁の双方と協議が必要となり、現状は川崎市側での調整が進む一方、大田区側ではまだこれからだという。
現場の挑戦と高コストの現実
今回の実証実験は、事業主体の川崎市、運行主体の川崎鶴見臨港バスに加え、自動運転技術の開発・実装で実績をもつ企業が集結している。アイサンテクノロジーやA-Driveは全国25地域での自動運転実証ノウハウを持ち、ティアフォーは自動運転車両の専門企業として開発を担当する。
KDDIが遠隔通信やレベル4(限定条件下での完全自動運転で、運転手の常時介入を必要としない)運転に向けた通信基盤を整え、京三製作所が信号連携のインフラ協調を支える。こうした顔ぶれからは、研究開発から社会実装・事業化までを見据えた戦略がうかがえる。
実証実験の運行主体である川崎鶴見臨港バスは、昨年度から産業道路でレベル2の独自実証を行い、運転手不足が深刻な都市部でも自動運転が有効かどうか検証を進めてきた。市によると、市内の営業所を持つ4つのバス会社に実験参画を打診したところ、手を挙げたのは同社のみだったという。
「機械と一緒になじみながら運転するには相応のトレーニングが必要です」(川崎鶴見臨港バスの小杉氏)という担当者の言葉が示すように、育成や車両管理など、自動運転ならではのノウハウを蓄積する必要がある。
一方で、採算性の壁も大きい。今回の車両費約9900万円は国の補助金が全額カバーし、川崎市も別途約5000万円を負担している。
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