長野駅前殺傷事件で示された「リレー捜査」の威力 警視庁で確立したノウハウが地方警察に波及
栃木県の治安は私が担当していた2000年当時はかなり悪く、重要事件犯罪発生件数は全国でも上位だった。「人口当たりの凶悪事件数は大阪府に次いで2位」という記事があったのも覚えている。人口200万人程度の県にしてはやけに忙しいな、と思っていたものだ。
失業率と犯罪には相関関係があるという説があるので、日本の失業率をちょっと見てみよう。
2002年には5.4%で過去最高となり、その後漸減する。ところがリーマンショックなどもあり、2009年には再び5.1%へ上がり、2014年にやっと3%台に落ち着く。
栃木県では2003年ごろをピークに犯罪は減少傾向に転じたので、失業率と歩調を合わせた動きだ。ただし、リーマン後にも犯罪件数は増えていない。そしてちょうどこのころから、街の至る所で防犯カメラを見かけるようになる。
リレー捜査の威力
防犯カメラの増加に伴い、警察の映像解析技術の進化も目を見張るものがある。
その実力を知らしめたのは、2011年1月、東京都目黒区で80代の夫婦が自宅に押し入ってきた強盗に襲われ、殺傷された事件だ。
警視庁は1カ月後、福島県いわき市の男(65)を殺人と殺人未遂容疑で逮捕した。男と殺傷された夫妻には面識はなかったが、男が犯行後、JR東京駅前からいわき行きのバスに乗ったことを防犯カメラの追跡捜査から特定したのである。
このような捜査を「リレー捜査」という。
2021年8月、東京メトロ白金高輪駅で発生した硫酸を使った傷害事件でも、リレー捜査が注目された。午後9時ごろ、改札を出て2番出口に向かうエスカレーターの踊り場で、22歳の会社員がうしろからつけてきた男に小瓶に入った硫酸をかけられたというものだ。最初の報道では、男は40~50代とみられ、身長17cmくらい、黒い野球帽をかぶり、右手に白い手袋、白いマスク姿ということだった。
『読売新聞』が当時の捜査一課の追跡捜査を詳しく報じている。
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