長野駅前殺傷事件で示された「リレー捜査」の威力 警視庁で確立したノウハウが地方警察に波及
現場に到着した警視庁捜査一課の初動捜査班の班員は、駅の防犯カメラに映った男の姿をもとに前足班と後足班に分かれて捜査を開始する。
前足とは犯人が犯行を遂行する前の経路などを調べること、後足とは犯行後に逃げたルートのことだ。
前足班は「男は被害者を尾行してきた」と考え、被害者が乗車した赤坂見附駅の防犯カメラを重点的に調べたところ、改札の外から男性のあとをつけるように駅構内に入っていく男の姿を捕捉した。
防犯カメラを巻き戻すと、男は午後6時に丸ノ内線で赤坂見附駅に着いていたことがわかる。つまり一度、赤坂見附の駅から外に出て、再度、改札に入っていた。
今度はどこから丸ノ内線に乗ったか調べると、新宿三丁目駅だった。さらに、高速バスターミナルのある方向から駅に歩いている男の姿が映ったビデオを捜査員が確認する。
こうして「犯人は上京してきた男では?」との推理が初日のうちに立ってしまった。
カメラ映像×推理の力
一方、後足班は白金高輪駅周辺の防犯カメラ映像を調べた。すると、着衣は異なっていたが、似た男が手を挙げている姿が、隅のほうに映っているのを捜査員は見逃さなかった。
「この男では? 犯行後、タクシーに乗ったのでは?」。係長は「品川駅から新幹線に乗ったかもしれない」と推理する。
はたして係長の推理は当たっていた。タクシーを降りて、品川駅の新幹線切符売り場で切符を買う男の姿が映っていた。JRに照会すると、切符は静岡行きだと分かった。
被害者は当初「犯人に心当たりはありません」と話していたが、捜査員から静岡と聞いて思い当たったのだろう。「琉球大学時代の先輩に静岡出身の人がいました」。捜査員が自宅に駆けつけると、タッチの差で、一度自宅に帰った男は再び新幹線で西に向かっていた。
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