イーロン・マスクに敗れた「カラ売り屋」冬の時代 長期の上げ相場という逆風、放置されるイカサマ企業
またSECは2023年にも、テキサス州の投資会社サビィ・マネジメントと同社の経営者ハル・D・ミンツが、虚偽情報流布や、売る株を手当てしないでカラ売りする「ネイキッド・ショートセリング」などの法律違反を犯し、200万ドル以上の不法な利益を上げたとして提訴した。
カラ売り屋はただでさえターゲット企業から頻繁に名誉毀損などで訴えられるので、それにSECによる従来以上の監視が加われば、当然防衛のための時間や労力も半端でなくなる。ヒンデンブルグ・リサーチやジェームズ・チェイノスが市場から撤退したのも、こうしたことが大なり小なり影響していると考えられる。
我が世の春を謳歌するイーロン・マスク
“冬の時代”で苦しむカラ売り勢に対し、「アメリカの株式市場で最もカラ売りされた会社」といわれるイーロン・マスク率いるテスラの株価は絶好調だ。
2010年にナスダックに17ドルで上場した同社は、量販セダン「モデル3」の製造立ち上げと一時は浮動株に占めるカラ売りの残高が6割を超えるという猛烈なカラ売りに苦しみ、株価は2019年の終わり頃まで10ドル台で低迷した。
カラ売り勢の代表格がジェームズ・チェイノスで、「BMWやポルシェが高級EVの生産を開始すれば、テスラにとって脅威で、イーロン・マスクはスペースXのほうに注力するため、2020年までにテスラのCEOを辞めるだろう」と述べ、株価が15ドル前後だった2016年5月に同社をカラ売りしたことを明らかにし、廃業する直前の2023年までカラ売りを続けた。
しかし、テスラは苦境を乗り越え、株価は2020年から爆騰を開始し、2023年末には248ドル、現在は397ドルに達した。チェイノスは巨額の損失を出したことを認め、テスラ株のカラ売りが廃業の大きな原因となった。
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