電車が止まる可能性も?実は深刻な「2038年問題」 社会インフラや家電など広範囲で影響大の恐れ

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また、今後鉄道に自動運転が採用される可能性もあります。しかし、この手のシステムは2038年問題のようなトラブルに弱いでしょうから、万が一にも運行が止まるなどのおそれがあります。

上原 哲太郎
上原 哲太郎(うえはら・てつたろう)/立命館大学 情報理工学部セキュリティ・ネットワークコース 教授
京都大学工学部情報工学科卒。京都大学博士(工学)。和歌山大学講師、京都大学准教授、総務省情報通信国際戦略局通信規格課標準化推進官などを経て現職。NPO法人デジタル・フォレンジック研究会会長、NPO法人情報セキュリティ研究所理事、一般財団法人情報法制研究所理事、データベース・セキュリティ・コンソーシアム会長も務める(写真は本人提供)

エネルギーインフラが止まるのも深刻です。電気やガスは10年ごとにメーターの法定点検があるため、被害を最小限にとどめられるかもしれませんが、気になるのは太陽光発電です。2009年に固定価格買取(FIT)制度が始まったことで、家庭での太陽光発電が流行りましたが、当時導入された分電盤の家庭用のパワーコンディショナーに2038年問題の影響を受けるものがあるのではないかと心配しています。

もう1つ懸念されるのが、工場です。10年ほど前に工場のIoT化の流れがあり、Raspberry Piという超小型コンピュータが大量導入されました。現在のRaspberry Piは対応済みですが、初期のRaspberry Piは32ビット。そもそもRaspberry Piは寿命の長さが売りの製品なので、初期のものでも2038年まで使える可能性は高いと見ています。

――身近な製品にも影響は及ぶでしょうか。

寿命が長い家電は影響を受けるおそれがあります。例えばテレビです。現在販売されている製品の中にも、2038年を乗り越えられないものがあるおそれがあります。こうしたテレビを13年後まで使うと、番組表が見られなくなったり、録画予約ができなくなったりするでしょう。人々が買い替えのため小売店に駆け込んだ時、需要を満たせる生産量が確保できているかは疑問です。

エンジニアが「2038年問題」を軽視するワケ

――さまざまなリスクを引き起こすおそれがある2038年問題ですが、対策はあるのでしょうか。

32ビットのシステムを64ビットにアップデートすれば解決できます。64ビットに拡張すれば、UNIX時間の最大値は西暦約3000億年となるので、半永久的に時刻を表現できるのです。

ただし、これは簡単ではありません。前述の通り、UNIX時間を使ったプログラムはシステムの深層部に存在している可能性があります。見つけ出すのにどれだけの時間や予算がかかるか、またどこまでリソースをかけるべきか、誰にも相場感がわからないのです。

加えて、2038年問題の深刻さを理解しているエンジニアやプログラマーは多くありません。テクノロジーの進化が目まぐるしい現在、システムやPC端末を10年以上もアップデートしないことは稀です。「あと13年もあれば、どうせどこかで入れ替わるはず」と、自分がつくったソフトウェアが10年以上動くことを想定していないのです。

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