「早期学力試験の是非」文科省通知がもたらす混乱 「青田買い」に警鐘、関西の大学「なにを今さら」

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ここに書かれていることは、東洋大学を想定すれば、至極まっとうな批判であり正論である。ただ、これは一方当事者の意見、しかも一部の意見に過ぎない。

文科省通知に困惑する理由

もう一方の当事者である大学の意見はどうなのだろうか。

少子化の波は、大学よりも先に高校にやってくる。今回の東洋大学の「事前実施」は「滑り止めの青田買い」である。受験生心理としては「滑り止め」は早期に安易に確保したい。だから2万人もの受験生を集めることができた。

従来であれば、東洋大学を滑り止めに考えない層、つまり東洋大学よりも難度が高い大学を滑り止めにした層が東洋大学を滑り止めにしてしまうことを高校側は危惧したのだろう。

これにより、高校ではいわゆるMARCHクラスの合格者数が減る可能性があり、「合格実績」の見栄えが悪くなる。だから東京の私立高校は大騒ぎをしているのだと指摘する関西の大学関係者もいる。

こうした関西方面の大学からは前述のように「なにを今さら言うんだ。30年前から定着している入試方式なのに……」という声が聞こえる。

大学側としては、

「履修範囲に影響のない基礎学力試験は、従来も学力考査と見なされず実施可能だった」

「文科省は『学力の三要素』を審査するように指示するが、基礎学力試験をしないでいかに判断するのか」

「英語の民間4技能試験は、期日に関係がない資格試験だが、一般選抜では資格試験の成績を提出することで英語の学力考査を『見なし満点』にするのだから、これも学力考査と見なされるのか

「小論文、口頭試問でも基礎学力試験に相当することを審査できるが、これは大丈夫なのか」

など、さまざまな疑問が生じているだろう。

さらに言えば、基礎学力試験を学力考査と見なされると、実施が遅くなり、合否の判定が遅れて合格発表が一般選抜の実施時期になる。そんなことをしたら受験生は大変である。

「年内入試」の合否がわからないから一般選抜を受けなければならない。特に地方から都市部の大学を目指す受験生には必要のないコスト(時間・費用)を課すことになりかねない。

大学側にとっても、2月1日から3月25日という一般選抜の実施期間はとても狭く、他大学の不合格者を受け入れるためには試験の実施の融通が利かなくなる。結果として受験生には不利益になる。

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