コンサルが語る「複雑化する会計分野」支援の中身 財務会計と管理会計、それぞれの課題と対処法
現場の声を聞き「実行可能なプロセス」を設計する
――会計分野では、会計基準の変更や新システムの導入といった変化が頻繁に発生します。そのコンサルティングをするうえで重視しているポイントを教えてください。
小林崇志(以下、小林) 会計の分野はどんどん複雑化しています。例えば2027年4月に適用される新リース会計基準では、幅広いリース取引を財務諸表に資産計上する必要が生じます。
企業企業が持つすべてのリース取引を正確に計上するには、契約情報の整理が不可欠です。しかし、多くの企業では情報が複数の部門やシステムに分散しており、統一するのが難しくなっています。
この課題に対応するため、当社は会計方針の検討だけでなく、リース取引の精査からシステムの選定・導入や改修、業務運用構築までを包括的にサポートしています。
その際、ただのルール変更だと考えるのではなく、現場の声を反映しながら、効率的かつ現実的に実行可能なプロセスを設計する必要があります。新基準の影響を考慮しながら、実行可能な形に落とし込んでいく。業務プロセスとシステムの両方を俯瞰し、実際の運用を想定しながら改善を図ります。
――BBSのコンサルティングの特徴について教えてください。
高橋功(以下、高橋) いちばんの特徴は、お客様に長期間にわたって寄り添い、共に課題解決を目指す「伴走型コンサルティング」である点です。
例えば、会計や経理業務を含むバックオフィス全般の効率化を支援しています。理想的な業務体制を実現するため、業務プロセスの整理や課題の特定から関与します。
当社には、公認会計士だけでなく、業務やIT、セキュリティーなど各分野の専門家が多数在籍しており、複数の領域の知見を持つ者も多くいます。複数のプロフェッショナルが集まってプロジェクトを手がけることで、伴走型コンサルティングを実現しています。
システム導入やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)への移行をスムーズに進めるためには、要件定義や業務設計を明確にするのが第一歩となります。
例えばシステム導入では、導入前に業務フローの棚卸しをする必要があります。当社は、業務プロセスの整備とシステムの活用を支援することでそこをカバーしています。
小林 もう1点、当社が自ら経験したことをベースにお客様にコンサルティングする「実践型コンサルティング」である点も特徴です。当社は東証プライム上場企業ですから、上場企業として求められる要素を自身で実践しています。そこで得た知見やトライ・アンド・エラーの経験を基にしたコンサルティングで、お客様から高くご評価いただいています。
「財務会計」「管理会計」それぞれが抱える課題
――財務会計は、株主や投資家をはじめとするステークホルダーに向けた情報提供の手段ともいえます。財務会計のコンサルティングにおいて注力している点を教えてください。
小林 財務会計で求められるのは、情報の正確性やタイムリーな開示、そして信頼性です。当社は会計基準の適用支援だけでなく、決算業務の改善・構築支援、システム導入後の運用支援や決算の早期化支援なども手がけています。企業が高い精度で財務情報を整理し信頼性を高められるよう、仕組みを構築しています。
さらに、監査法人との橋渡し役も担います。基準の解釈や適用方法において、企業と監査法人との間に認識の相違が生じないよう、当社がフォローします。これにより監査法人との対話がスムーズになり、現場の負担軽減につながります。
――自社の経営判断やマネジメントのために行う「管理会計」についてはいかがですか。
高橋 管理会計は財務会計とは異なり、ルールが明確に定まっていない部分も多くあります。そのため、企業の特性や経営戦略に応じた柔軟なアプローチと、経営層と現場のコミュニケーションを円滑にする仕組みづくりが必要です。
当社では例えば、BIツールや経営管理システムを活用して、データ分析の効率化をサポートしています。これが円滑なコミュニケーションにつながり、迅速な経営判断に向けた一手ともなっています。さらに、新しいテクノロジーを使った柔軟なアプローチの1つとして、生成AIを活用した実証研究も進めています。
もちろん、データガバナンス体制の構築も重要視しています。それにより業務プロセスが効率化され、組織全体の透明性も向上し、経営者が安心して意思決定を行えます。
――データドリブン経営が注目される中、BBSは新中期経営計画「BBS2026」を掲げています。具体的にどのような施策を行っていますか。
高橋 当社は今、顧客情報や会計データ、人事データを統合するデータ基盤の構築を検討中です。経営判断のスピードと精度を高めるため、必要なデータをタイムリーに参照できる環境整備を目指しています。
また、BIツールのダッシュボードを使って、重要なデータに簡単にアクセスできる仕組みを提供するように準備を進めています。データ活用の文化を根付かせるには、ただシステムをつくるだけではなく、業務で使いやすい形にすることが大事。メンバーの負担を軽減しつつ、経営層が迅速な意思決定を行える体制を目指しています。
小林 もう1点、財務情報と非財務情報の一体管理にも注力しています。近年、人的資本や従業員エンゲージメントなどの非財務情報の重要性が高まってきました。
人的資本や環境データといった非財務情報の統合や可視化、一体管理は、企業価値を高めるうえで不可欠です。しかし現状では、日本企業の多くで不足しているといわれます。
この課題を解決するべく、当社自身、非財務情報のデータを一元管理するプラットフォームの構築を進めています。例えば、人的資本管理の観点から、月に2回行っている全社員対象のモチベーション調査について、分析した結果を各部門で共有し、退職リスクの軽減や職務適正化を図っています。段階的にリリースしている状況で、今後は拡大を検討しています。
年齢に関係なく活躍できる「エイジレス」な環境
――BBSでは人材育成の取り組みにも注力していると伺いました。
小林 当社では、多様な人材が活躍できる環境づくりの一環として、「エイジレスチャンス」という理念を掲げています。年齢や経歴に関係なく能力を発揮できるよう、若手社員にも責任あるプロジェクトを任せています。
私自身、新卒で大手監査法人に入所し、さらに不動産関係の事業会社を経て、BBSに入社しました。今は、このバックグラウンドを生かして働けている手応えがあります。
またBBSでは、経験豊富な社員や社内の公認会計士を講師とした研修プログラムやOJTがあり、実践的なスキルアップをサポートしています。例えば、業界トレンドに即した会計スキルやプロジェクトマネジメント能力を磨く研修が充実しています。
働きやすさの面では、フレックスタイム制やリモートワークを柔軟に活用できます。個人の希望に応じ、家庭や個人の事情に合わせた働き方が可能なので、ワーク・ライフ・バランスがよく、社員の満足度向上につながっています。
高橋 経験値の低い若手社員でも、本人に意欲があれば海外駐在が可能です。若いうちから国際的な業務経験を積み、グローバルな視点を養うことができるのは当社の特徴です。
私自身、シンガポールやドイツに長期駐在していた時期がありました。家庭の事情で海外に行くケースもあるかと思いますが、それによりせっかくのキャリアがストップしないよう、会社側も全力でバックアップしてくれます。
コンサルティング業界には、激務であるというイメージを持っている人も多いでしょう。当社では、幸せを損なわず、心身ともに健康な生活を送れるようなマネジメントが根付いています。
私も家庭を持っていますが、ライフステージの変化によって稼働の強度を柔軟に変えながら、自分らしくサステナブルに働ける。BBSは、そんなすばらしい環境だと感じています。
――最後に、今後の展望について教えてください。
小林 財務会計の分野では、次の会計基準変更やさらなるデジタル化に向けた準備を進めています。短期的な成果だけでなく、持続可能な経営基盤を整えるためのパートナーでありたいですね。
高橋 管理会計では、生成AIやBIツールを活用した意思決定支援のさらなる進化を目指しています。また、人的資本や非財務情報の統合を通じて、経営層が戦略的な意思決定を行える環境を提供していきます。
当社が誇るコンサルティングのあり方は2つ。1つは、お客様と長期間にわたって寄り添い、共に課題解決を目指す「伴走型コンサルティング」。そして東証プライム上場企業としての実体験に基づく「実践型コンサルティング」です。この双方を、今後も進化させていきたいと思います。