発電最大手JERA、電力取引で「相場操縦」の深層 4年半もルール違反、ユーザーの利益侵害も

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当該ルールによれば、工事などで送電線の一部が停止中の場合でも、電力を送ることができる容量がある場合には、それに対応して売り札を出さなければならない。

しかしJERAの東京エリアの担当部署では、そうした「系統制約」時に未供出を繰り返していた。JERAは社内体制やルール、教育・研修体制に不備があったことをその理由としているが、プロであれば当然知っているはずのルールが守られていなかったと言える。

電取委によれば、遅くとも2019年4月から2023年10月までの約4年半にわたり、JERAの東京エリアを所管する部署は取引のルールに反した行為を続けていた。

そして「データが現存する2020年10月から2023年10月までの3年余りの間に約54億キロワット時の売り入札が追加的になされていた可能性があり、そのうち約6億5000万キロワット時の売り入札が約定していた可能性がある」という。

不正な取引から利益を得た可能性も

電取委の見立てでは、余剰電力が市場に売りに出されていなかったことで、2021年11月の特定の時間帯には市場での約定価格が1キロワット時当たり50円以上も 本来の価格よりもつり上がっていた可能性があるという。電取委は「未供出による約定価格の上昇により、JERAが相応の利益をスポット市場から得ていたことも推察される」と勧告で指摘している。

ここで重大なのは、JERAが日本全体の発電電力量のうちで約3割という圧倒的なシェアを持つ巨大寡占企業であるという点だ。JERAが本来、必要な売り入札をしなかった場合、市場価格の高騰を招き、ひいては小売電気料金上昇につながるおそれもある。電取委は「競争を通じた低廉な価格での電力供給を受けるという需要家の利益を侵害し得るものであったという批判は免れない」と断じている。

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