「週3日働き年収2000万」オジサンのニッチな仕事 「元手ゼロ」で楽なビジネスを軌道に乗せたワケ

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ところがこのオジサンの場合、持ち出しはゼロです。

元印刷会社の営業という職歴で得た人脈で、物件のデッドスペース=屋上にビル広告という付加価値を発生させて、不動産オーナーには広告収入を、印刷会社やデザイナーには仕事を発生させて、オジサンは手数料という形で生活費を得る仕組みを作ったのです。

「大通りに面した大きなビルの看板広告はそれ相応の広告費ですし、そこに広告を出せる企業に繋げるのは、それなりの規模の広告代理店になりますよ。

でも、よく見ると小さいビルで看板広告出せるところはまだまだたくさんありますし、そういうところは広告費が安すぎて大手は手を出さない」

「それで広告費が安ければ、看板出したい会社も出てくる、ということですね?」

そうそう。そういうことですと、オジサンは満足したようにカップ酒を飲み干して、もう一杯注文しました。

市場の「隙間」は簡単に見つけられる

「それで、こうやって飲みながら次の営業先を探しているわけですね?」

満足そうにカップ酒を飲むオジサンに、私は最後の答え合わせの質問をしてみました。

私の経験上、結構、こういう小さなビルの個人経営の飲み屋の店主がビルそのもののオーナーだったり、テナントの飲み屋にオーナーが飲みに来ることが結構あったからです。

実は、オジサンは次の営業先を探すために、こうやって飲み歩いているのではないか、と看板広告ビジネスの話をし始めた段階で考えたわけです。

「兄さん、なかなか良いカンしているねぇ」

オジサンはこの日一番のいい笑顔をしてくれました。たまに、研究に直結するような、こういうイイ話を聞けるので、歌舞伎町やゴールデン街で飲むのはたまりません。

このオジサンは過去の勤務経験から得た広告業に関する洞察と人脈を利用することで、「週3日働くだけで年収2000万円」というビジネスを作り上げたわけなのですが、ライフスタイル企業家という観点から見直したとき、一つ見落としがちな重要なメッセージを伝えてくれていました。

ライフスタイル企業家は、趣味や経験をベースに自分のライフスタイルを楽しみながら維持するのにちょうどよい規模の起業を目指す(あるいは、意図的にその規模で成長を止める)、起業スタイルであると定義されてきました。

このライフスタイル起業を実現するにあたって、ライフスタイル企業家は「ニッチ」を獲得して、自分のライフスタイルに共感する人たちを顧客として「柵の内側にとどまる=Staying within the fence」必要性(売上アップや市場シェア拡大を目指さないこと)が提唱されてきました。

しかし、その「ニッチ」を見つけるのが難しいうえ、その「ニッチ」が儲かるとわかったら他の会社が参入してきて競争になってしまう。

実際、モリソン(ストラックライド大学)らの2001年の研究のように、ライフスタイル企業家が切り開いたニッチに、新たな企業家や既存企業が参入していくことで新産業の創出とマクロ経済への好影響を期待する論文も登場しています。

しかし、そのような競争によって新産業が生まれることに注目してしまうと、「ライフスタイル企業家」という概念の意味合いが失われてしまいます。むしろライフスタイル企業家が、他の企業と競争を避ける「工夫」をいかに実践しているのかに注目する必要があるでしょう。

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