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スティーブ・ジョブズ Ⅰ・Ⅱウォルター・アイザックソン著/井口耕二訳 ~技術とリベラルアーツの交差点に立つ

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評者 米倉誠一郎 一橋大学イノベーション研究センター教授

 

思っていたよりもずっとずっといい本だった。本書は、ガンを宣告されたアップル創業者スティーブ・ジョブズ本人がアメリカ屈指の伝記作家ウォルター・アイザックソンに自ら依頼した伝記である。この書評を依頼された時、一時は断ろうと思った。大好きな人物の伝記評論など、中立的に書けそうにないからだ。ジョブズ同様、僕もビートルズやボブ・ディランが好きだ。彼らの伝記を客観的に読めるわけがない。同じように、この伝記をきちんと評価することなど不可能に違いない。しかし、断るほどの勇気はなかった。

僕は初代Macからのアップルユーザーである。1984年にMacが発売された時は、アメリカの大学院に留学していた。IBMもアップルも、当時2000ドルもしたPCやMacを半額で学生に提供しようとしたが、さすがにそれは独占禁止法に抵触する恐れがあり、まず大学に貸し出し、それを学生に半額リースするという仕掛けにしたのだった。その時に配られた初代Macには生々しく

“The Property of Harvard Univ.”という刻印があった。ビジネススクールはセンスがないので全学的にPCを選び、その他の学生はどちらを選んでも良いことになった。

本校大学院にいた僕は、そのスタイルから躊躇なくMacを選んだ。斬新な形状も肩に担いで持ち運べる専用ケースもクールだった。しかし、使ってみて判明したのは、その使いやすさが革命的だったことだ。まさに魔法のランプ。修正、打ち直し、カット&ペースト、すごいことがマウスだけですべて出来る。このマシンがなければ博士論文執筆など不可能だった。

 

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