欧州で苦戦「中国車両メーカー」の新たな足かせ 経験不足や違反に加え「ウクライナ戦争」の影も

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

一方で同社がとくに力を入れているヨーロッパ市場においては鳴かず飛ばずという状況であることは、過去の記事で何度もご紹介したとおりだ。

チェコの民間鉄道会社レオ・エクスプレスと契約した都市間急行列車用車両「シリウス」は、営業に必要な認可取得が遅れたことで、同社との契約が破棄されたことに加え、車両の基礎部分における熟成不足などが露呈。営業用として問題なく使えるかどうか未知数で、短期間の試験的な営業運転を行って以降も、再契約の話はない。

CRRC シリウス ヴェリム試験線
チェコのヴェリム試験センターで試運転をしていた当時のシリウス(筆者撮影)
CRRC シリウス
試験運行後にそのまま本契約とはいかなかったシリウス(筆者撮影)

オーストリアの民間鉄道ウェストバーンとの間でリース契約した2階建て車両も、試運転を開始してからすでに数年が経過しているが、こちらは試験営業すら行われておらず、先行きはまったく白紙の状態だ。ヨーロッパ市場に対するCRRCの経験不足が露呈した形だ。

westbahn CRRC EMU
オーストリアで営業されるか先行き不透明な2階建て電車(筆者撮影)

CRRCは契約獲得を有利に進めるため、中国政府から多額の助成金を受け取って入札提示価格を下げるなど、なりふり構わない手段で進出を試みている。実際に、ブルガリアでは車両納入に関する契約を獲得できたものの、これはEU外からの補助金に関する規則(外国補助金規制 The Foreign Subsidies Regulation/FSR)に抵触していることが指摘され、この契約は破棄されることになった。

「親ロシア」への抵抗感

ヨーロッパ市場への進出をなかなか実現できないのは、前述の通り同社の経験不足や違法行為などが主な理由であるのは明らかだが、一方でロシアによるウクライナ侵攻以降、ロシア寄りの中国に対してヨーロッパ各国の抵抗感がより強まったことも、進出を阻む決定的な要素となったことは否定できないだろう。

CRRCの新型電車をテストするにあたり協力を申し出たチェコのレギオジェットに対しても、チェコ国内では中国へ手を貸すことは間違っている、という否定的な意見が多く飛び交っていた。同社は以前、価格が高騰している電気機関車をCRRCと共同開発する可能性についても言及していたが、いつの間にかその話はまったく聞かれなくなった。

CRRC シリウス
短期間だけレギオジェットで試験営業をしたCRRC製連接電車シリウス(筆者撮影)

ウクライナへ積極的な支援を行っているチェコ共和国の立場として、親ロシアの中国および同国企業と関わりを持つことは、国内世論を敵に回すことにもなりかねない自殺行為だ。

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事