出張族が「コンフォートホテル」を愛用する理由 チェックイン前から使えるサードプレイスで差別化

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コンフォートホテル高松 ライブラリーカフェ
ブルーの壁が印象的な『コンフォートホテル高松』のライブラリーカフェ(写真提供:コンフォートホテル) 
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各ビジネスホテルの代名詞的なサービス・設備を紹介し、その奥にある、経営哲学や歴史、ホスピタリティまでを紐解いていく連載「ビジネスホテル、言われてみればよく知らない話」。 
第14・15回は前後編で、コンフォートホテルが出張族に選ばれる理由を解明。戦略やブランド理念まで深掘りする。 

出張先でPC作業をしたいとき、電源のあるカフェがみつからなかった経験はないだろうか。やっとみつけても電源のある席は限られていて、座れないことも多い。たとえ座れてもドリンク代がかさみ、最近は滞在時間に制限がある店も……。 

上記のような経験をして、筆者は結局、全国に店舗を展開するシェアラウンジの会員になるに至ったのだが、同じく出張族である友人たちにこの話をすると、「コンフォートホテルに泊まれば、作業場所難民は回避できるよ!」と言われた。それも複数人からだ。 

こぞって推される理由はどこにあるのか。「どんなもんじゃい!」と思いつつ泊まってみて、結果に大いに納得することとなった。 

出張族は「作業場所難民」になりがち

コンフォートホテルの人気を支える大黒柱的な存在が、「コンフォートライブラリーカフェ(以下、ライブラリーカフェ)」という共有スペースだ。文字通りカフェのような空間だが、宿泊者は無料で利用できる。 

席種はホテルによって異なるが、1人席、カウンター席、テーブル席、ソファ席など多彩で、フリーWi-Fi、電源、USBポートも完備だ。しかも、フリードリンク。レモンウォーターが常備され、14時以降はコーヒー、紅茶が何杯でもお代わりOKとなっている。 

飲み放題のドリンク。コーヒーはマシンを常備し、紅茶は数種のティーバックから選べる(写真提供:コンフォートホテル) 

さらに、朝食後の10時頃から24時まで使えて、チェックイン前、チェックイン後も利用OK。まさに出張族の作業場所としてぴったりな条件が整っているのだ。 

筆者が『コンフォートホテル東京東日本橋』に宿泊した際も、ライブラリーカフェはPC作業やオンラインミーティングをする出張族で賑わっていた。そして、それ以外にも、朝には旅行の行程を相談するご家族、チェックイン前には荷物を預けにきて休憩している人、夜は購入してきたお弁当を食べている人、ちょっとした飲み会をしているグループ……等々、様々なシチュエーションで多くの人が利用していた。 

オンラインミーティングに利用しやすい1人席/『コンフォートホテル高松』(写真提供:コンフォートホテル) 

ライブラリーカフェは「サードプレイス」 

一体なぜこのような場所ができたのか。ライブラリーカフェが生まれたのは、コロナ以前の、2018年9月のことだ。 

「ライブラリーカフェ導入以前は、『いかに客室で快適に過ごしてもらうか』『地域のインフォメーションを強化して、いかにホテルの外でも楽しく過ごしてもらうか』の2択でサービスを考えていました」と同ホテルを展開する、株式会社チョイスホテルズジャパン フランチャイズサービス部の瓦真由子氏は振り返る。 

しかし、ゲストの旅の目的が多様化していくなかで、「客室以外での過ごし方の選択肢を提供できる、サードプレイス的な居場所が必要ではないか」という意見が社内で出るように。 

そこで、コンフォートホテルのコンセプト「Color your Journey. 旅に、実りを。」に基づいて、他ホテルとの違いにもつなげられる場所をと考えた結果、「旅を充実させるスペース」であり、「出会いの場所」としてライブラリーカフェが開発されたのだ。 

仕切りのあるテーブル席も/『コンフォートホテル高松』(写真提供:コンフォートホテル) 

図書館でありカフェでありコワーキングスペース 

ライブラリーカフェは名前に「ライブラリー」と付くように、100冊以上の本を設置する図書館でもある。 

本のセレクトは、『こども本の森 中之島』や『早稲田大学国際文学館』(通称:村上春樹ライブラリー)の選書で知られるブックディレクター 幅允孝氏によるものだ。各ホテルごとに、「まちの来歴」「旅の醍醐味」「心と体を整える」「心地よい時間」の4つのテーマで選ばれている。 

『コンフォートホテル四日市』ライブラリーカフェの書棚(写真提供:コンフォートホテル) 

筆者が宿泊した際には、界隈の地形について紹介した地図本や、旅についての随筆などが目にとまった。もちろん、これらの本は自由に読むことができる。実際、仕事で頭が疲れたときに、自然と手が伸びた。 

これと連動して、内装は「旅の余韻に浸れる空間」を目指してデザインされている。例えば三重県にある『コンフォートホテル四日市』のライブラリーカフェには、伝統工芸である萬古焼や伊勢型紙を展示。他方、『コンフォートホテル呉』では、郷土のグルメや観光スポットが壁に描かれている。 

たとえ余裕のない出張で観光はできなくとも、館内でそんなふうに旅情が感じられるのはうれしいものだろう。 

『コンフォートホテル高松』ライブラリーカフェの書棚(写真提供:コンフォートホテル) 

泊まらなくても利用できる! 

ライブラリーカフェには、もうひとつ大きな特徴がある。それは「宿泊しなくても利用できる」点だ。一度公式サイトから予約して宿泊し、メルマガ受信をOKすれば、翌月から「月5回」ライブラリーカフェが利用可能なクーポンがメール配布されるからだ。このクーポンは毎月、その前年4月から前月までに利用した人全員に配られている。 

さらに、詳細は後編に譲るが、数回宿泊してコンフォートホテルの「GOLD会員」になれば、何度でも利用可能に。つまり、全国46カ所のコンフォートホテルのライブラリーカフェを、いつでも「サードプレイス」使いできるようになるのだ。 

『コンフォートホテル名古屋金山』ライブラリーカフェのカウンター席(写真提供:コンフォートホテル) 

実際に会員からは、「出張先ではミーティングでコワーキングスペースを使ったり、ちょっと飲み物を飲んで休憩したい場面が多いので、ライブラリーカフェがあるコンフォートホテルを必ず選ぶ」「取引先との商談まではここで仕事をしている」「新幹線に乗る時間まで、ライブラリーカフェで時間をつぶしている」といった声が寄せられている。 

出張費を安く抑えたい、商談を成功させたい出張族のニーズにライブラリーカフェがマッチし、顧客の囲い込みにつながっているということだろう。これを表すように、コンフォートホテルの客層は20~50代後半のビジネスマンが中心となっている。 

子ども連れにうれしい、『コンフォートホテル名古屋金山』ライブラリーカフェのソファ席(写真提供:コンフォートホテル) 

顧客が喜ぶサービスはどのように生まれるのか 

ライブラリーカフェのような、顧客を囲い込むサービスはどのように生まれるのだろうか。コンフォートホテルの場合、その理由は社内体制にありそうだ。同ホテルでは、商品開発、PR、オペレーション、品質管理と、業務が各専門分野に分かれている。サービスを生み出すのは商品開発部門。担当者は現場に行ってゲストの様子を実際に見てニーズを掴み、アイデアに昇華する業務に特化している。 

さらに、ゲストからの宿泊後のクチコミ投稿や、会員向けアンケートも小まめにチェック。3カ月に1度行われる「社員向け集合研修」で、サービススタッフから意見の吸い上げも行っている。机上論だけのアイデアにならぬよう、常にリアルな声に耳をそばだてているのだ。 

ライブラリーカフェの利用イメージ(写真提供:コンフォートホテル) 

出張族の声を受けて「横向き寝」も快適に 

この地道な顧客の声の収集からはもう1つ、「出張族のお気に入り」が生まれている。快眠にこだわった寝具だ。企画されたアイテムは、枕、ベッドパッド、ガウンの3つ。 

1つめの枕は、「ゲストの半数近くが横向き寝で寝ついている」という調査結果から、「仰向け寝だけなく、横向き寝にも対応する」枕を寝具メーカーと共同開発。頚椎を無理なく支え、寝返りのうちやすい「ユニット構造」に加え、ほどよい弾力にもこだわった。 

横向き寝にもフィットするオリジナル枕(写真提供:コンフォートホテル) 

さらに横向き寝時に、膝の間に挟んで足圧分散をしたり、仰向け寝では、足首を乗せてリラックスできる足枕の貸し出しも行っている。 

2つめのベッドパッドは身体をフィットさせ、睡眠時、腰や肩への負担を和らげるアイテムを厳選。3つめのガウンには、刺激が少なく優しい肌触りに加え、速乾性の高いワッフル生地が選ばれている。 

腰や肩への負担を和らげるベッドパッド(写真提供:コンフォートホテル)

これらのアイテムの活用により、コンフォートホテルでの眠りについて、出張族から喜びの声が多く寄せられているのだ。 

ゲストの声を丁寧にすくい上げ、施設やアイテム、サービスとして還元しているコンフォートホテルの戦略。後半では、出張族に選ばれるさらなる理由となっている、朝食と会員制度について紹介する。 

肌離れがよく、汗が素早く乾くワッフル地のガウン(写真提供:コンフォートホテル) 
笹間 聖子 フリーライター・編集者

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ささま・せいこ / Seiko Sasama

フリーライター、時々編集者。おもなジャンルはホテルビジネス、幼児教育、企業ストーリー。編集プロダクション2社を経て2019年に独立。ホテル業界専門誌で16年間執筆を続けており、ホテルと経営者の取材経験多数。「週刊ホテルレストラン」「ダイヤモンド・チェーンストアオンライン」「FQ Kids」などで執筆。企業のnote発信サポーター、ブックライターとしても活動。大阪在住。

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