衝突事故で「1両だけ大破」、欧州鉄道の隠れた課題 各国で成長、新興鉄道の車両調達に落とし穴?

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同型客車は、オーストリア鉄道が夜行列車ナイトジェット用として引き続き使用しているほか、チェコ鉄道も9両を保有している。レギオジェットからの指摘を受け、チェコ鉄道は客車をヴェリム試験センターへ送り、車体強度の解析を行ったが、同社の保有車両は車体を更新した際に補強工事を行ったことから、強度には問題がないという調査結果が出た。オーストリア鉄道は、とくに動きを見せていない。

OBB クシェット
事故当該車両と同型のオーストリア鉄道クシェット客車(撮影:橋爪智之)
チェコ鉄道 クシェット 回送
車体強度解析のためヴェリム試験センターへ回送されたチェコ鉄道客車(撮影:橋爪智之)

列車運行事業への参入を自由化するオープンアクセス法の施行から既に10年以上が経過し、ヨーロッパ各国では旧国鉄に対抗する民間運行会社が次々と誕生し、新規参入は今も増え続けている。法的な手続きがきちんと完了すれば、誰でも参入可能なのがオープンアクセスの最大の利点だが、諸手続きとは別に必要なのが「車両の準備」だ。

中古車両の耐久性は大丈夫か

車両を確保する手段は各企業によってさまざまだ。例えば初の民間高速列車「イタロ」運行で話題となったイタリアのNTVは、創始者3人がいずれもイタリア財界に名を轟かせる大富豪で、出資企業も多く資金調達が容易であったことから、アルストム製高速列車AGVの新車25本を一気に揃えることができた。ただ、これは非常に特殊な例で、大半の企業は旧国鉄で使用済みとなった機関車や客車を譲り受け、改修して使用している。

レギオジェットの場合、当初は中古車をかき集めて運行を開始したが、順調に業績を伸ばしたことで資金的に余裕が出たことから、機関車はアルストムから最新のTRAXX3を30両以上購入している。ただし客車については、今回問題となった簡易寝台車も含め、引き続き中古車を中心に編成を組んでいる。近年は運行区間の拡大や、利用者数の増加に合わせ、ドイツ鉄道で不要となったインターシティ用客車を中心に中古車のさらなる導入を進めている。

レギオジェット TRAXX
機関車は新車を投入しているが客車は中古のレギオジェット(撮影:橋爪智之)

だが、今回の事故で、旧型客車の強度や耐久性という部分についての問題が浮き彫りになったといえよう。

旧型客車の全てが危険ということではないが、とくに1980年代より以前に製造された急行用よりランクの低い客車は、特急用として製造された車両と比較して台枠に使用される鋼板の厚さが異なるなど、強度や耐久性の面で若干の不安が残る。経年による劣化に加え、製造時の基礎構造の違いといった部分でも、大きな差がある。

北欧 中古客車
北欧で活躍を続ける中古客車の中には1960~70年代製造の車両もある(撮影:橋爪智之)

ヨーロッパ中で今も数多く走り続けている中古客車だが、安全性の面からも、きちんとした整備と必要に応じた改修工事を行うとともに、より新しい世代の中古車へ代替・更新することが、今後の課題となってくるだろう。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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