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「臭い」の言葉にも負けず、「し尿収集」職員の奮闘 「災害時のトイレ対策のスペシャリスト」になる

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  • 藤井 誠一郎 立教大学コミュニティ福祉学部教授
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生徒の暴言や教員の態度に前田氏をはじめとする作業チームのメンバーには激しい怒りがこみ上げたが、「相手にせんとこ」と言って、怒りをぐっとこらえて鎮めた。

前田氏は帰宅途中、市役所の壁に吊るされた垂れ幕が目に入った。そこには「みんなで差別をなくそう」と書いてあった。それを見た瞬間、自然と涙が溢れだし、嗚咽が暫く止まらなかったという。

「し尿収集者は社会の宝」

このような経験をしても、前田氏ら協会の皆さんは職業差別を超越した次元で仕事を極めようとしている。

職場での研修を通じてコンプライアンス遵守を徹底し、自らの使命「地域の公衆衛生を守る、まちをきれいに守る」を確認し合い、その目標に全てのパワーを集中させるように歩んでいるのだ。

どんな罵声を浴びせられようが、それに反応するパワーまでも目標へのエネルギーへと変換させ、地域の公衆衛生を守る方法とは何か、平時・災害時を問わずまちをきれいに守るためにできることは何かを議論し合い、実践でそれを追求している。そのうちの1つが「トイレの専門家になる」である。

実際に前田氏らは次世代へつなげていくため、2つの改革を実践している。

まず第1に「親切・丁寧・迅速・確実な収集の徹底」として、丁寧な声掛けやきめ細かい配慮をこれまで以上に強化した。また災害時における収集処理行動計画や事業所のBCP(業務継続計画)を策定し、「災害時のトイレ対策のスペシャリストになる」ようにした。

職場全員でBCPへの認識を深めている様子(写真:筆者撮影)

災害時のために各家庭で携帯トイレを備蓄してもらい、その使用方法を市民に周知徹底するなどしている。

これらの取り組みは汲み取り業務を進化させ、社会の誰もから必要とされる業務へと昇華させる先進的な取り組みだ。

全国的に広がれば、し尿収集に携わる職員が、私たちの日常の排泄を守ってくれる人たちであるという認識が浸透していき、これまでの職業差別が一掃されていくのではないかと思われる。

この流れの先には、「し尿収集者は社会の宝だ」と認識される社会が展望される。

【写真7枚】知られざる「し尿」の収集作業に密着した
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