ミセス「コロンブス」騒動における隠れた「勝者」 「古い価値観」はいつから「古い」とされるのか

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SNS炎上について考える女性
コロンブスが猿に教えを施すという構図が「炎上も当然」になったのは、いつの頃からだろうか(写真:metamorworks/PIXTA)

いつから「炎上も当然」の価値観はつくられたか

3人組バンドMrs. Green Appleの新曲「コロンブス」のMVが、激しく炎上した。その内容が、コロンブスたちが猿たちの家に押し入っては、教えを施すという内容だったためである。同MVは「最初から最後までアウト」「誰もこれを止めなかったのがむしろ驚き」などの言葉とともに、バンドの支持層であるはずの若者たちからむしろNGが突きつけられる格好となった。

協力関係にあった企業の逃げ足の早さもまた、類を見ないものであった。MVが問題視されたとみるや、即座にコメントを発表し、これは自社の知るところではない、と弱冠27歳のアーティストに全てを押し付けて、逃げ切りを図ったのである。よほどに、危険な案件だと踏んだのだろう。メディアもまた、熱量を上げて積極的に取り扱い、いかにそれが不適切であるかが語られた。公開から1日足らずのうちに、若きミュージシャンは災禍の中心となったのである。

幸運だったのは、「コロンブス」が、あまりに常識外れ過ぎたことかもしれない。徹頭徹尾、時代錯誤な内容を全力でやり切っている様子からは、誰の目にも、そこに悪意のひとかけらも見いだせなかった。Mrs. Green Apple当人が即座に謝罪したことも効果的であった。無知を憎んで人を憎まずとばかりに、彼らが赦されたことは、この不幸な出来事の中の、大きな幸いだった。

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