映画「バティモン5」に映る"移民たちのリアル" 映画撮影の背景について、ラジ・リ監督に聞く

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筆者は実際に日本に帰化した外国人から、警察官から職務質問を受けて、在留カードを見せたところ、「こいつ、帰化してやがる」と言われた、という話を聞いたことがある。

残念ながら、こうした外国人差別は、ビジネスの世界にも存在する。

日本企業から信用されたいために、先に代金を支払ったものの、商品を納品してもらえなかった外国人経営者の企業のケースもある。

在日外国人は、このような日本人に対して怒るというよりは、諦めてしまっているようだ。

差別的な扱いを受けた人の中には、永住権取得者や、帰化した人もいる。長い間、日本の社会で税金を払って、社会に根付いているのになぜ? と思う反面、母国へは帰りたくないと話す人もいた。日本ほど、清潔で快適な国はないからだという。また、日本に来るために留学費用を含め、多額の資金を投資している。それならば多少不快なことは我慢しよう、という理由のようだ。

いつまでたっても肌の色で差別される

しかし、これが、「フランスでフランス人として育った」ラジ・リ監督のように2世・3世になると不満だけが募るのではないか。この点についてラジ・リ監督に聞くと、以下のような回答があった。

「親の世代は仕事を求めてフランスに来て、稼いだら祖国に戻るという人もいた。ところが、私たち2世・3世は、フランスで生まれ育って、自分の居場所はここしかない。にもかかわらず、周りからは『君達は半分ぐらいフランス人かな』と言われてしまう。例えば、アメリカなら、そこに住んでいればアメリカ人なのに、ここではいつまでたっても肌の色で差別されてしまう」

ラジ・リ バティモン5
ラジ・リ監督(写真:筆者撮影)

これと同様のことが、日本でも起こりつつあるのではないか。先に述べた、警察官の態度は明らかに「見た目で日本人とは違う扱いをする」証左だ。

若者にも目を向けると、親の都合で来日した未成年者の多くは、高校では夜間クラスのある学校に入って、学んでいる。そこでは先生方が彼らの進路も含めて熱心に指導していると聞く。一方で、小学校までは学校に通っていたが、中学校に進学すると、日本語の授業がわからず不登校になるケースもあるようだ。

そして現在、一部の地域では未成年の在日外国人による犯罪が起きている。先に述べた、一部の横柄な態度の日本人と接するうちに、「居場所がない」と感じていることが影響しているのかもしれない。

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