静岡リニア「開業10年遅れ」JR東海の経営大丈夫? 突然辞任、川勝知事の「置き土産」が及ぼす影響
ただ、本当にそれが目的であれば、JR東海は2020年6月に2027年の開業が間に合わないことを実質的に認めている。そもそもJR東海は2017年11月に静岡工区の工事契約を締結し、この時点で着工から開業まで10年という見方を示していた。その後、2020年6月に「今月中の着工が2027年開業のギリギリのタイミング」として、川勝知事にトンネル工事の前段階としてヤード整備の許可を願い出た。本来なら全体の工事は10年かかるところ、人材や機材をやりくりしてすべての工程が順調に進めば2027年に間に合う可能性があると判断したためだ。しかし、この提案は拒否され、2020年6月の時点で2027年開業は事実上不可能となった。
2023年12月、JR東海は「2027年」とされていた品川―名古屋間の開業時期を「2027年以降」に変更することを国土交通省に申請し認可を得た。開業が遅れることが「事実上」ではなく、正式に決まった。
川勝知事はこの時点で「JR東海は旗印を下ろした」と宣言してもよかった。しかし、JR東海は具体的な開業時期について明示しなかった。静岡工区がいつ着工できるかわからない以上、明示しないのは当たり前なのだが、なぜか川勝知事は「以降」と書いてあるのだから、「2027年開業の旗印を下ろしていない」と受け止めた。今回、「今から始めても10年かかる」という発言で、川勝知事はようやく「一区切りついた」と納得した。
工事「13年弱」JR東海は否定
以上のことからわかるとおり、3月29日のJR東海の発言は川勝知事が「一区切り」というほど重要なものでもない。JR東海は「今から工事を始めても10年」の根拠について、2017年時点の計画をそのまま適用しているにすぎない。2020年6月の段階では7年に短縮できる可能性があると考えていたが、長野県内や山梨県内の工事の状況から判断すると現在では短縮は難しいとしている。さらに、川勝知事がそれぞれの手順を単純に足して13年弱としていることについては「並行して進めることができる作業もあるため実際には10年程度」としており、川勝知事の13年という発言を否定している。
静岡のせいでリニア開業が遅れるという批判をかわすため、川勝知事は神奈川県駅(仮称)と山梨県駅(仮称)の間を先行開業させる構想を唱えてきた。リニア問題は一区切りついたと主張する川勝知事に対し、「部分開業させることが目的ではなかったのか」という質問が10日の会見で報道陣から出た。
川勝知事は「私が勝手に言っているわけではない」として、2010年5月に開催された国のリニア中央新幹線小委員会でJR東海が「(神奈川県駅と山梨県駅の間にある山梨リニア)実験線の延伸完成から間断なく(品川―名古屋間の工事に)着手することが重要」と説明していることを踏まえ、「延伸完成とは駅と駅がつながって営業できるようになることを指す」と述べ、部分開業はJR東海のアイデアだとした。しかし、実験線の延伸完成とは2008年に工事が始まり2013年に完成した42.8kmへの延伸工事のことである。この点でも川勝知事の発言は正しくない。
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