「第2青函トンネル」議論はどこまで進んでいるか 津軽海峡にもう1本、貨物と新幹線が別々に走る

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このWGの検討をさらに深掘りするため2017年には「青函共用走行区間等高速化検討WG」が設けられた。その検証結果から、本年のゴールデンウイークから時速260km化が図られる。

だが、いずれにしても時間帯区分では通年で実施するには課題が多く、首都圏対札幌の時間短縮に資する新幹線の高速化は解決のめどが立たない、国としても悩ましい課題の1つになっている。現在、盛んに貨物新幹線が言われ、軽量の生鮮品や急送品輸送は実証実験から事業へと発展したものもあるが、貨物全体から見たボリュームはわずかなもので、在来線貨物輸送を肩代わりするものではない。宅配便のパレット輸送なども提案されているが、本格的に貨物を新幹線に移すことはかなり困難である。そもそも線路施設が重量貨物列車の通過を想定していないのだ。

函館山を望みながら道南いさりび鉄道線を走り青函トンネルに向かう上り貨物列車。青函トンネルは津軽海峡の荒波も関係ないルート(上磯~茂辺地)(写真:山井美希)

ゼネコンを中心とした民間から提案される抜本策

それに対して、もう1本の青函トンネルを掘り新幹線と貨物列車の走行路を完全に分ける抜本的なプランが民間で構想され、提案されている。その一つを手掛けるのが日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)だ。JAPICはゼネコンを中心に現在は200社以上で構成される一般社団法人で、政官学や経済界・産業界、マスコミが同法人の場を通して議論し、政府に具体的なプロジェクトを提言してゆく。1983年に発足し、東京湾横断道路(現東京湾アクアライン)の整備を皮切りに、関空やつくばエクスプレスもJAPICから民間の声として上げて実現させている。

元来、国家的に資する大規模プロジェクトは三全総、四全総などの中で国が自ら立案してきた。しかし経済の停滞と財政の逼迫、国民・マスコミの大規模施設に対する視線の変化から、国が積極的に動かなくなった。だが、その姿勢により日本の経済的地位は下がり、その一方で激甚災害などは増加し、よりしっかりしたインフラが求められる時代となった。施設は必ず老朽化する。日本の人口は減る。だからこそ今のうちに手を打っておかないと、衰退に拍車がかかり、困るものも多い。そこで民間から将来の国土造りのインフラを提言する組織だと言う。三本柱に防災・減災・国土強靭化に関係するもの、国内立地で国際競争力を強化するもの、地域活性化に資するものを挙げ、額で言えば1兆円前後のプロジェクトを考える。

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