「賛否両論」笠原さん、妻亡き後も歩む切り盛り人生 店の経営、3人の子の育児、そしてYouTubeも

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検査を受けた夫人が持ち帰った診断書には見慣れない文字が並んでいた。2人ともまるで実感が湧かず、

「もしかして、がん……?」

と顔を見合わせた。子宮体がんだった。ドラマなどで描かれる場面と異なり、実際の告知シーンは意外なほどあっけない。主治医からがんの告知と同時に治療方針について話があった。

「そっか……手術で取れるんだ。早く見つかってよかった」

と2人でほっと胸をなでおろした。全摘手術、抗がん剤治療も気丈に乗り越え、江理香さんはすっかり回復したように見えた。

再発を告げられたた江理香さん、事業は拡大の最中

「かみさんの実家がある沖縄にも旅行に行きました。みんなで一緒にプールで泳いで、大好きなビールも飲んで、もうすっかりよくなったと家族全員が思っていました」

再発を告げられたのはそんな矢先の出来事だった。定期検診で病変が見つかり、その後、入退院を繰り返した。

笠原さんは時間をやりくりしては通院に付き添ったり、入院中のお見舞いに行った。“これなら食べられそう”と連絡が入れば作って江理香さんに持っていったという。

「長女は中学生だったけれど下2人は小学生。そんな子どもには酷だろうと闘病中も病名などは伏せていました」

仕事を辞めるという選択肢が頭をよぎるときもあったが

「どれだけの人に迷惑をかけるんだろうと思うと、無責任に辞めるだなんてとても言えませんでした」

しかも当時、名古屋に支店を初出店する話も進んでいた。これまで事業拡大の話には反対していた江理香さんが唯一「挑戦してみたら?」と、背中を押してくれた話だった。

「お店がメディアで取り上げられるようになってから、本当にいろんな仕事の依頼が来たけれど、かみさんはいつも決まって反対していたんです。“今あるお店、お客様を大切にするのが先決”って」

そして“あなたはすぐに人を信用してしまうからそんなんじゃ騙されるよ”と苦言を呈した。江理香さんが応援してくれた支店の話を中途半端に投げ出すことはできないとなんとか踏みとどまった。

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