「痴漢取り締まる」YouTuberは法的に問題ないのか 行きすぎれば刑事、民事上のペナルティも
また、脅迫的・威圧的な言動、あるいはプライバシー権などの人格権侵害に対して不法行為に基づく損害賠償責任が生じる場合もありえます。
——犯罪行為を発見して、警察に引き連れて行く行為は、私人逮捕にあたるのでしょうか。
刑事訴訟法213条は「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と規定しています。そのため、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる」場合に身柄拘束したときには、私人逮捕にあたります。
ただ、犯罪行為から時間や場所が離れている場合には、現行犯逮捕として適法かどうか微妙な場合もあります。もし違法な場合には、やはり暴行罪や逮捕罪等に該当し、不法行為に基づく損害賠償責任が発生しえます。
被告人に対しては無罪推定の原則
——こうした自警団YouTuberは、どのような点に気をつけるべきでしょうか。
自警団YouTuberの動画は、犯罪抑止の効果があるかもしれません。ただ、被疑者、被告人に対しては「無罪推定の原則」があり、当然、人権もあります。
現行犯だから、被疑者だから、何をしてもいいということにはならず、行き過ぎれば刑事、民事上のペナルティを受けることを頭に入れておかなければなりません。動画でも電車内で被疑者を追いかける場面が映っていましたが、周囲の人を巻き込んだ大きなトラブルにも発展しかねません。
特に、動画投稿による広告収入が目的だとすれば、「撮れ高」を求めて、より言動がエスカレートする可能性を秘めているとも言えます。
清水 俊(しみず しゅん)弁護士横浜合同法律事務所
2010年12月に弁護士登録、以来、民事・家事・刑事・行政など幅広い分野で多くの事件を扱ってきました。「衣食住その基盤の労働を守る弁護士」を目指し、市民にとって身近な法曹であることを心がけています。個人の刑事専門ウェブサイトでも活動しています(https://www.shimizulaw-keijibengo.com/)。
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