「介護のために退職」で陥る負のループが恐ろしい "ビジネスケアラー予備軍"から知識で備えよう

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2018年6月2日に放送されたNHKスペシャル『ミッシングワーカー 働くことをあきらめて…』では、こうした介護離職などを理由として、労働市場への再起ができなくなった人(ミッシングワーカー)が、当時の時点で100万人以上いるという衝撃の事実が明らかにされています(介護離職だけが理由ではない点には注意も必要ですが)。

この最悪のループから抜け出すために必要になるのは生活保護です。一度、ミッシングワーカーになってしまえば、一時的に生活保護を活用し、介護サービスなどを利用しながら、就職先を探すしかなくなります。

しかし、生活保護は、ただ申請すれば簡単に受けられるようなものではありません。今後、日本の財政がさらに悪化していけば、生活保護の認定条件が厳しくなり、受給できたとしてもその内容は貧弱になっていくでしょう。

ここで、自分が介護離職をしたとしても、金銭面で、兄弟姉妹や親族などの協力を得れば、総じて負担が減らせると考える人もいるかもしれません。

しかし介護離職をした後も、現在は得られている協力が、引き続き同じように得られるとは限りません。ここには、リンゲルマン効果と呼ばれる心理学的なブレーキが働く可能性があるからです。この心理学的なブレーキについて、少し詳しく考えてみます。

兄弟姉妹の協力はあてにならない

リンゲルマン効果が知られるきっかけとなったのは、リンゲルマン(Ringelmann,M)自身による報告ではなく、ドイツ人のメーデ(Moede, W)の論文(1927年)中で「興味深い研究」として掲載されたことがきっかけでした。

リンゲルマンは、1人、2人、3人、そして8人という4つの集団(被験者)を作り、それぞれに綱引きをさせて、そのときの引っ張る力を測定したそうです。

結果としては、1人の場合で63kg、2人の場合で118kg、3人の場合で160kg、そして8人の場合で248kgとなりました。

当然のことながら、集団を構成する人数が増えれば、綱引きの力は上がりました。ただ、全員が綱を必死に引けば、2人の場合では、1人で綱を引いたときの2倍、3人で3倍、8人では8倍となるはずです。

しかし、この結果を分析してみると、1人で引いたときの力を100%(63kg)としたとき、2人ではそれぞれが93%(118÷2=59kg )、3人では85%(160÷3=53kg)、そして8人ではなんと49%(248÷8=31kg)になっていたのです。

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