72歳「余命3カ月」を部活仲間に託した彼の最期 血縁に頼れない時代、誰に看取られるのがいいか

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そんな、眩しい青春の時間をともに過ごした仲間たちに、男性はある意味、とても無茶な頼み事をしたのだ。

そのとき、医師から告げられたのは、主に2点だった。

本人が末期のがんであること。そして、もはや病院で施す治療は何もなく、「この先は自宅か施設で過ごしていただくことになる」ということだった。

しばしの沈黙が流れた。

やがて、自分自身の運命を受け入れた男性は、不意にすぐ隣で押し黙ったままでいた後輩の手を握って、頭を下げた。「よろしく頼むよ」と。

ヨット部仲間たちと「青春再来」を味わい尽くす

いくら、10代の多感な時代、ともに汗を流した仲間からの頼みとはいえ、親兄弟でもない人の世話なんて……。

ごく普通の感覚の持ち主なら、そう思うかもしれないが、驚いたことに、彼らは違った。なんと、末期がんの男性の介護を、仲間全員で引き受けるという一大プロジェクトを敢行するのだ。

手を握られた後輩は苦笑いを浮かべつつ、正直にこう告白した。

「あの瞬間は、『な、なんで俺?』と思いましたよ。親の介護すら、経験したこともなかったですから」

それでも、彼らは、男性のために走り回った。

すぐに入居できる施設を探し回り、あっという間に彼の〝終の住処〟を見つけてきた。会計を担当する者、必要な物資をそろえる者、ただ、毎晩のように施設に通ってきては、寄り添い続ける者……。仲間たちは役割を分担し、それぞれができることを精一杯やりながら、男性の最後の時間を支えた。

仲間のなかには女性の姿もあった。聞けば、国体のセーリング競技で優勝経験もあるという猛者だった。

そんな女性がかいがいしく彼のことを介護する姿を目の当たりにして、私は勝手に思い込んでいた。2人は過去に男女の関係があったのではないかと。ある日、その疑問を彼女にぶつけると、彼女は笑ってこう返した。

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