経営の成否を分ける、「支出管理」の要点とは? 「紙文化から抜け出せない」経理の苦い実情
「ミスが許されない」ゆえ、紙文化が根強い
コロナ禍を機に人々の働き方は変化して、それを支えるDXもさまざまな業務で進展した。ところが、この波に取り残された領域がある。経理だ。法人向けの支出管理クラウドを展開するTOKIUM代表取締役の黒﨑賢一氏は、こう証言する。
「コロナ禍で多くの人がリモートワークをする中、私たちの営業先企業の経理部門に電話をかけると、必ずと言っていいほどつながりました。そこで経理は出社を余儀なくされることも少なくないと痛感したんです。経理は紙文化が根強く残っていて、いまだに『紙のみぞ知る』世界なんです」
紙文化は、働き方改革を阻害するだけではない。企業の経理部門は、公認会計士の資格を保有するほど専門性の高い人が在籍することもある。そうした経理のプロが、処理が終わった請求書や領収書をファイリングしたり、段ボール箱に詰めて倉庫に運んだりといった単純業務を任されることもある。はたまた場合によっては膨大な書類の中から、目当ての1枚だけを探し出す作業に時間を費やす。紙文化は、コスト増や生産性低下の温床となっているのだ。
にもかかわらず、経理においてなぜデジタル化が進まないのか。その理由を黒﨑氏は次のように分析する。
「事業は時代とともに変化します。それゆえ売り上げに直結する部門が使用するシステムは、おのずとシステム導入や業務フローを見直す機会が多くなるんです。一方、経理のオペレーションは従来のやり方を続けても問題が起きにくい。むしろミスをしないことが求められるので、業務フローの見直しは後回しにされてきたのが実情です」
経理を取り巻く、2023年の2大インパクト
ただ、2023年は従来のオペレーションのままでは対応できない制度改正が2つ控えている。10月のインボイス制度開始、12月末の改正電子帳簿保存法の宥恕期間終了だ。とくにインボイス制度の開始は経理担当者の不安が大きい。
TOKIUMが経理関係職に実施した調査(22年10月)によると、仕入れ先から受け取る請求書への対応方法について、「対応すべき内容が不明」「未定」「わからない」と回答した人は54.9%と過半数を占めている。新制度開始まで半年を切った今、インボイス対応は急務だが、黒﨑氏はこのような状況にこそ可能性があるとみている。
「これまで経理は、経費精算や取引先への支払いの処理をする仕事が中心でした。しかし、この変化への対応を機に経理もオペレーションを見直せば、単純作業やそれに伴う時間を減らし、より付加価値の高い業務に集中できる可能性があります」(黒﨑氏)
経理部門でさえ、原本に触ることはもうない
そんな経理DXを可能にするサービスが、TOKIUMだ。企業の支出には、従業員の経費精算と取引先への支払いの大きく2種類がある。いずれも領収書や請求書という紙が発生しがちだが、経費精算クラウド「TOKIUM経費精算」や請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」はそれらをクラウド上で処理できる。
特長は、システムとBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)を組み合わせ、垂直統合で提供している点だろう。
例えば請求書の支払い処理をする場合、一般的なシステムを活用するとしても、届いた請求書を開封してスキャンしてデータ化する作業が残る。
その手作業さえもTOKIUMが請け負うのだ。請求書の届け先はTOKIUMになり、自社に届くことがまずなくなる。届いた請求書はTOKIUMのオペレーターが入力する。経理担当は処理済みのデータを確認するだけでいい。経費精算も同様だ。経理担当の負担がなくなるだけでなく、従業員が台紙にのり付けするといった手間もカットできる。
「システム導入こそDXと捉えると、システムの導入後、データ入力作業が増えて組織が疲弊するという事態も招きかねない。だから、企業がデジタルに即した文化や習慣を取り込むことも同時に必要です。システムのために人間がいるのではなく、人間のためにシステムがあることを忘れてはいけません。それを踏まえて全体を設計する必要があります」(黒﨑氏)
TOKIUMのオペレーターは領収書や請求書に特化して1つのツールで処理をするので、専門性が高く、効率もいい。異なるベンダーのツールとBPOを組み合わせた場合より、コストを抑えたサービスを受けられる。
目に見えにくいメリットも重要だ。経費精算する従業員も、領収書や請求書を処理する経理担当も、場所に縛られずに柔軟な働き方ができる。とくに強調したいのが、これまで以上にそれぞれが楽しさや、やりがいを感じられるようになることだ。
「多くの人は、楽しくて、なおかつ社会の役に立つ仕事をすることを望んでいると思います。単調な反復作業や転記作業などを会社の外に出せば、より付加価値の高い仕事にリソースを割くことができ、働く意欲が上がります。楽しさややりがいは働く原動力。一人ひとりが感じる楽しさが会社の魅力を創出して、結果としていい事業につながるのではないでしょうか」(黒﨑氏)
支出ビッグデータの活用で経営の意思決定に貢献
シリーズ累計導入企業約1200社(23年2月末現在)と、支出管理クラウドとしてのポジションを確立したTOKIUM。黒﨑氏は「経理DXは文化を取り込むこと」と言ったが、TOKIUMのプロダクトやサービスの背景にある文化は何だろうか。
「お金をどこに使うかで、その後の時間の過ごし方は変わります。私たちは『時を生む』を志して10年前に創業。以来、支出管理のサービスを提供し続けてきました。TOKIUMのサービスを使うことで、経理に関係する方々がその専門性を生かすことのできる時間を最大化する。そうしたビジョンを持って事業を展開してきました」(黒﨑氏)
「時を生む」ために、今後も支出に関連する機能やサービスを開発していく考えだ。黒﨑氏は最後にアイデアの一端を教えてくれた。
「『経理』が『経営管理』という言葉の略であるとおり、領収書と請求書を見れば会社の支出状況が見えてきます。TOKIUMでは、請求書や領収書などの支出データを蓄積しています。これを基に支出を研究し、支出の成功パターンを模索できるかもしれない。例えば採用担当者が候補者と社外で会うとき、過去データから『このホテルのラウンジで会うと採用につながりやすい 』とわかるかもしれません。そういった判断を支援するような機能なども検討していきたいと考えています。
経理のキャビネットに眠っている紙をすべてデジタル化すれば、経理を超えて事業や経営の意思決定にももっと貢献できるはずです。決算の早期化やそれを基にした経営陣への提言など、まさに会社を成長させるドライバーになりうるでしょう。その一歩目として、TOKIUMを活用していただければと思います」
売り上げだけでなく、適切な支出やコストの管理も企業成長に欠かせない要素。経理を取り巻く環境シフトが起きている今こそ、大ナタを振るうにはいいタイミングではないか。
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