自動運転の調査研究を早期に手掛けた先見の明 次世代ビジネスの基盤を作る専門家の柔軟姿勢
自動車業界の新たな潮流「自動運転」の検討初期から参画
みずほリサーチ&テクノロジーズには、多様な専門知識を持つコンサルタントがそろう。
同社のデジタルコンサルティング部では、デジタルビジネスにおける最先端技術の他、政策・法制度、業務DX・システム改革など幅広い領域を手掛けている。課長を務める築島氏は「デジタルコンサルティング部ではデジタル技術の社会実装なども手掛けています。中でも、2016年くらいから力を入れているのが『デジタル×自動車』の領域、すなわち自動運転です」と同部が推進するプロジェクトについて紹介する。
今でこそ自動運転は次世代の中核技術として、また有望な産業として注目されているが、当時はさほど認識されていなかったという。
「2016年に警察庁の委託事業で『自動運転の段階的実現に向けた調査研究』を当社で行いました。当時、警察庁でもまだどのような自動運転が実現されるのか分からない段階で、実は当社社内でも『自動運転は現実的なのか、その中で当社が自動運転に関わる意義があるのか』と上司から尋ねられたほど、理解されていなかったのです」(築島氏)
まだ社会にニーズがあるのかも分からない中、新しい取り組みに果敢に挑戦する気概と、それを認める度量が同社にあった。その後、一気に自動運転が注目されるようになったが、まさに先見の明があったともいえるだろう。
レベル4自動運転トラックの社会実装に向けた
プロジェクトにも参加
同部の上席主任コンサルタントを務める西村氏は「自動運転に限らず、当社は鉄道を含む公共交通のデジタル活用も手掛けています。自動運転に関していえば『法規制』『技術開発』さらに『社会実装』の3つの領域で取り組み、そこには警察庁や国土交通省など複数の官庁と連携しています。また『技術開発』では、自動運転に限らずIT・デジタル技術の知見が不可欠です。自動車の外部通信などの技術開発などにも当社は早くから関与しています」と話す。
興味深い取り組みも進んでいる。「当社は今、自動運転トラックを社会実装し、社会課題を解決するプロジェクト『RoAD to the L4プロジェクト』に参画しています。これは経済産業省が主導するプロジェクトで、大手自動車メーカー、物流事業者、ベンチャー企業など、さまざまなステークホルダーが社会実装に向けた技術開発や事業モデル等について議論しています。
プロジェクトに参加しているステークホルダーはいわば呉越同舟の関係です。当社には中立公正で透明性の高い立場から各社の意見を聞き、合意形成を図りながら1つの解に導くことが求められています。当社の知見や議論をまとめて方向づける力を信頼されてのことだと思いますので、その期待に応えなければと感じています」と築島氏は語る。
同社は自動運転の最初期から携わってきたことで技術や法制度、社会実装にも精通し、多くのステークホルダーとの人脈も形成している。このようなコンサルタントは国内では貴重な存在だ。
MaaSの基盤となるデータ連携のあり方を提言
次世代モビリティサービスという視点では、MaaSへの期待も高まっている。
西村氏は次のように語る。「モビリティの利便性を高めることは、通勤・通学、買い物、通院などの他、インバウンドも含む観光への好影響も期待されます。その点では、都市部だけでなく地方部におけるモビリティの利便性も重要な視点です。トラックによる物流と同様に、MaaSにもさまざまなステークホルダーがいます。ところが、各社各様の内容、形式、ルールでデータを運用しているのが実情です。これらの連携を推進させるためのガイドラインを国土交通省で整理・公表しており、当社がその作成を支援しています」
しかし、単に技術面での課題を解決し、スマートフォンアプリ等を実装するだけでは、MaaSは実現しない。「事業者にとっては、このサービスが事業として成り立つのかという大きな意思決定があります。MaaSを導入して、地域の住民の方に利用されるのか、地域の外から観光客等の利用者は来るのか。採算ベースに乗せるためには、利用者数を増やさなければなりません。移動需要を喚起し、移動の総量を増やす必要があります。そのためには、単に交通を便利にするだけではなく、移動の目的となる観光や、飲食店、小売店などとも連携して取り組んでいくことが求められます」。街の魅力づくりなども含めて、移動需要を喚起する必要があるわけだ。
「そうなると、特定の地域・事業者だけの問題ではなくなります。解も1つではありません。当社では、交通だけでなく、交通以外の企業を含めて、MaaSにどう巻き込んでいくかといった提言や提案も行っています」(西村氏)
専門性と個性を備えたコンサルタントがここに
築島氏は「自動運転もMaaSも、技術やビジネスのあり方をしっかりと考える必要があります。私たちは既存のビジネスにはないものを将来の社会像を構想しデザインしてみせ、そして合意形成を図るプロだと私は思います。また、そこに私たちの存在意義があると自負しています」
同社の提言が、メードインジャパンのガイドラインや規格に繋がり、将来的にはそれを海外に輸出することも期待されている。
西村氏は「前例のないことにも積極的に挑戦できるのが当社の強みです。<みずほ>グループにはテクノロジーだけでなく、産業調査、戦略、サステナビリティ、医療福祉などの専門家がおり、ファイナンスの機能もあるので事業化まで見据えた支援が可能です」と胸を張る。
モビリティだけでなく、これからも次世代の技術、サービスが次々と生まれてくるだろう。それらに率先して柔軟に対応する素地が同社には備わっている。