再生可能エネルギーの導入に必要な視点とは サステナビリティ領域の専門家が見据える未来
定量的なリスクの提示が議論を活性化する
日本は現在、2020年に発表された「2050年カーボンニュートラル宣言」の下、官民一体となって再生可能エネルギーの導入などに努めている。みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社では官民両面に対する支援を行っている。その支援は、再生可能エネルギーが今ほど注目されていなかった90年代、旧富士総合研究所時代に始まり、サステナビリティ分野の研究開発やコンサルティングにおいて業界をリードし、顧客の高い信頼を獲得してきた。
「現在、サステナビリティ分野のコンサルタントは130名を超えており、カーボンニュートラル実現を支援するという私たちの今の仕事は、長い積み重ねの先にあるものだと思っています」
そう語るのは主任コンサルタント・境澤亮祐氏だ。民間企業のうち電力会社などを対象としたプロジェクトにあたっている。
日本の電力会社では現在、再生可能エネルギー拡大に向けて新しいステージに立っているという。
「今後さらなる導入に向けた適地の不足や送電設備の整備などさまざまな課題があります。例えば太陽光発電の導入が進んだ複数の地域では、電力需要が比較的少ない時期の晴れた日中に発電量が増えて過剰になり、有効利用できていないことが問題になっています」
果たしてこれまでの投資を回収できるのか、また、今後どのようなペースで何に投資をしていくべきか。境澤氏はその判断材料を提供している。
「電力需要の増減や、太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入量、燃料価格の見通しなど想定したシナリオを元に分析を行い、戦略策定支援しています。シミュレーションに用いる手法は長年、学術分野でも使われてきたものです。これによってリスクを定量的に示すことができ、お客さまへの提案や議論がしやすくなっていると感じています」
不透明性の高い時代だからこそ、信頼性の高い手法に基づくシミュレーションによる事業リスク評価比較が頼りにされているのだ。
政策知見の高さで顧客に「最適解」を提案する
一方、コンサルタント・小林将大氏は、電力を消費する民間企業(需要側)を顧客としている。
企業が再生可能エネルギーを調達するには、次の図に示す通り四つの手法がある。各手法はコスト・評判等の観点で一長一短であり、企業は自社が抱える事情を考慮して、最適なポートフォリオを構成する必要がある。
「それぞれの手法に一長一短があるだけでなく、これらにまつわる法律や制度は細分化されており複雑で、改定も頻繁に行われるからです。このため、どの組み合わせが最適なのかは常に変わります。私たちは将来にわたってお客さまが最適なポートフォリオを構成できるように、常に最新の情報を調査し提供しています」
小林氏は、いち早い情報の把握と正しい理解が求められる民間企業(需要側)へのコンサルティングだけでなく、環境省や経済産業省といった国の政策決定の支援も行っている。その経験が、対民間企業での業務に生きているという。
「複雑で頻繁に変わる法律や制度も、その変更に至るまでの経緯を把握しているから理解しやすいという面があります。また、信頼性という点で、私たちが国の仕事をしていることをご評価くださる民間企業のお客さまも多くいらっしゃいます」
境澤氏は今の仕事を“自分の仕事”として意識するようになったのは入社4年目の頃だったという。新人の教育係も務めながら、ある再生可能エネルギー事業者の内包するチャンスとリスクを網羅的に整理するプロジェクトに参加したのだ。
「グループ企業であるみずほ銀行の営業部門や産業調査部のメンバーとも一緒に取り組みました。プロジェクトマネジメントなど、より俯瞰した視点が求められる仕事でしたが、『電力の専門家として一皮むけるのではないか』と考え、力も時間も精一杯に注ぎました」
境澤氏の視点を高めることとなったこのプロジェクトは、みずほ銀行との協業によるものである。このような形態で企業の戦略策定・実行支援を提供できるのも、「One Mizuho」の一角を担うみずほリサーチ&テクノロジーズならではないだろうか。
「再生可能エネルギーに新たな投資をするお客さまに対しては、〈みずほ〉のグループ力を生かしてワンストップで融資の相談まで対応できる強みがあります」と境澤氏は胸を張る。
コンサルタントは前向きで正直であるべき
「先輩に『コンサルタントという仕事は、人だよ』と教えられました。蓄積した専門性を武器とする我々は最終的にこの会社・この人になら安心して相談できると、お客さまに思っていただく必要があるということです。そのために求められているのは、前向きかつ正直な姿勢だと聞き、心掛けています」
小林氏は、カーボンニュートラルの実現だけが自分の仕事のゴールではないと考えている。
「コンサルタントは、お客さまのビジネスを発展させ、企業価値を高めながら環境も守るべき立場です。国の政策に関わる際にも、この視点は失わずにいたいと思います」
みずほリサーチ&テクノロジーズは高い専門性とプロ意識を武器に、サステナブルな未来へと歩みを進めていく。