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【前編】優しさを拒絶する7歳の彼女が抱える傷 勉強が苦手で友達もいない、その裏にあった事

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  • 植原 亮太 精神保健福祉士・公認心理師

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穂乃果さんが抱えているさまざまな問題とは(写真:mits / PIXTA)
重い精神疾患や、社会的孤立、うつ病――。生活保護支援の現場でカウンセラーとして働いていた筆者の植原亮太氏は、彼ら・彼女たちに従来の福祉支援や治療が効果を発揮しにくいことに気づきます。そうした人たちに接し続けてきた結果、明らかになったのは「幼少期の虐待体験」でした。植原氏による『ルポ 虐待サバイバー』を一部抜粋・再構成。親との愛着形成がうまくいかず、さまざまな問題を抱える、被虐待児(愛着障害児)の美山穂乃果さん(7歳)の事例を紹介します。

被虐待児(愛着障害児)がとる行動は、普通の子どもたちを基準に考えていくと理解できないことが多い。

今回紹介する事例も、彼らの特殊な行動の背景に、異常な家庭環境があるのを見落とされてしまったものである。しかし、彼らが抱えている事情が見えてくると、その行動の背景には「孤立」が悲しみを帯びて淡くひろがっていることを感じられるはずだ。

周囲に溶け込めず漂うような存在感

小学2年生の美山穂乃果さん(7歳)は、2時間目の授業と3時間目の授業のあいだの中休みを、教室で自分の席にじっと座ってひとり過ごしていた。校庭からは楽しそうな声が聞こえていた。席を立ち、2階にある教室から階段で一階に下り、下駄箱で靴を履き替えて校庭に出た。多くの子どもたちは、サッカーをしたり、かけっこをしたり、縄跳びをしたり、または木陰で円になって数人でおしゃべりしたりしていた。

みんな楽しそうだ。穂乃果さんは、校庭をひとりでふらふらと歩き回り、立ち止まり、また歩くことを何度か繰り返し、鬼ごっこをしている子どもたちに近づいた。

しかし、仲間に入れてもらうわけでもなく、子どもたちの周りをうろうろしているだけだった。一見すると、一緒に遊んでいるように見えた。けれども遊んでいる子どもたちの近くにいるだけだった。――漂うように、ふわふわと、ただその場にいた。

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【問題児ではないが気になる子】

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