マーケターが「未来の選択肢を広げる」ために 市場価値を高めるキャリア戦略の描き方

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能力やキャリアの幅を広げるために、今の自分を知り、足りないスキルや経験を補う必要を感じている人は多い。そして、ありたい姿や、そこへのたどり着き方は人それぞれ。オリジナルの未来を切り開くためにも、個人の意思を起点に自律的なキャリア形成が求められる。自分と向き合い、戦略的にキャリアを切り開いてきた事例として、リクルートのマーケティング組織におけるふたつのケースを紹介したい。

事業軸と機能軸でキャリアをカスタマイズする

多彩な事業を持つリクルートでは、人材、飲食、美容など幅広い事業領域の中で、SEO、プロモーション、広告などのマーケティング施策が行われている。このマトリクスを活用して、多種多様な掛け算でキャリアを形成できる点が特色だ。

リクルート キャリアのマトリクス
リクルートでは、多種多様なキャリアのマトリクスが用意されている。マーケターとしてのスキルを“掛け算”する形で成長していける

例えば、幅広いマーケティング施策を経験し、特定の事業を極めたいのであれば、「特定のサービスで、マーケティングのスキルを網羅する(事業軸)」のがひとつ。一方、サービスにとらわれずSEOなど特定の機能を極めたい場合は、「複数のサービスを横断してSEOの専門性を高める(機能軸)」ことを選択するのも手。選択肢は人の数だけある。個人の意思に応じて、自律的かつ柔軟にキャリアパスを描くことができるのだ。

この特色を自分のキャリア戦略にうまく活用したのが、『Airワーク 採用管理』を担当する市川泰宏氏と、『タウンワーク』を担当する松尾晴揮氏だ。

まず、市川氏は2013年にリクルートジョブズ(現リクルート)に新卒で入社、マーケティング組織に配属され、主に『タウンワーク』のマーケティング全般を経験した。5年目を迎えた頃、自分のキャリア形成について改めて考えるようになったという。 

「今後、さらなるキャリアアップのためにマーケティング全般を幅広く担当していくべきなのか、ひとつの機能に専門化していくべきなのか、悩むようになりました。そんなとき、当時の上長からのアドバイスは『ひとつの機能を極めれば、その手法がほかの機能にも役立つ。だから、将来また幅広く経験するとしても、一度ひとつの機能を極めてみてはどうか』というもの。そのアドバイスにすっと納得できたんです。Web上の検索エンジンやSNSといったプラットフォームに出稿する有料広告を軸として、自分の専門性を高める結論に至りました」(市川氏)

リクルート マーケティング室 中途領域マーケティングユニット AirWORKマーケティンググループ グループマネジャー   市川 泰宏氏
マーケティング室 中途領域マーケティングユニット AirWORKマーケティンググループ グループマネジャー
市川 泰宏

その後、『タウンワーク』に加えて『リクナビ派遣』『リクルートダイレクトスカウト』など、サービスをまたいで有料広告の分野を経験した。そして市川氏が有料広告に専門化して3年ほど過ぎた頃、さらなる転機が訪れる。立ち上がったばかりの『Airワーク 採用管理』のマーケティングリーダーを任されたのだ。

「有料広告の分野を一通り極めた実感を得て、もう一段ステップアップするためにも事業のマーケティング全般を管轄したいと考えていた時期でした」(市川氏)

成熟領域から新規領域へ。「個の意思」で道を開く

市川氏は、「さまざまなマーケティング機能を経験した時期」「有料広告という機能に絞って専門性を高めた時期」そして、「ひとつの事業のマーケティング機能全般を統括する時期」と、自分が描くキャリアを段階的に積み上げてきた実績を振り返る。

「最初に自身の担当するサービスのマーケティング機能全体を知り、マーケティングの構造を把握できたことがよかったです。今はこれまでのスキルを総動員し、ひとつの事業におけるマーケティング機能全般を統括しています。自分の意思に合わせて、順を追って経験できたからこそ、着実にスキルを高めていけました。有料広告を自分の強みの軸としては持っているものの、マーケティング全般を見ることができる人材に成長できたと感じています」(市川氏)

事業フェーズやビジネスモデルの異なるサービスを経験することで、機能軸の専門性は、具体的にどのように高まっていくのだろうか。多様なサービスに携わることでマスプロモーションの専門性を極めてきた、松尾晴揮氏に聞いた。

松尾氏は、教育関連の企業からリクルートコミュニケーションズ(現リクルート)に転職。BtoC事業の『タウンワーク』でのマスプロモーションを3年間経験し、BtoB事業の『Airワーク 採用管理』の立ち上げに従事、再び『タウンワーク』に戻って現在に至る。成熟領域から新規事業の立ち上げへと担当サービスを変更した理由は、「マスプロモーションにおける専門性をもう一段階深めるため」だという。

マーケティング室 中途領域マーケティングユニット APマーケティンググループ グループマネジャー 松尾 晴揮氏マーケティング室 中途領域マーケティングユニット APマーケティンググループ グループマネジャー
松尾 晴揮

「『タウンワーク』は世の中に広く認知されている一方、『Airワーク 採用管理』の名前はまったく知られていない状況でした。そんな状況下で、認知度を上げるとともに短期間で登録者数を増やしていく必要があり、サービス特性の分解、ターゲット設定、定量定性調査など、ゼロから進めていきました。『タウンワーク』のマーケティングが家をリフォームする仕事とすれば、『Airワーク 採用管理』は土地を耕して一から家を建てる仕事。一口にマスプロモーションといえども、それほど業務内容が大きく異なりました」(松尾氏)

『タウンワーク』のような成熟事業であれば、サービスの訴求ポイントを裏付ける調査が過去から蓄積されているため、「どうやって訴求するか」を高いレベルで求められる。しかし『Air ワーク採用管理』のような立ち上げたばかりの事業では、その前段である「何を伝えるか」の検討に力点が置かれた。

「本サービスのターゲットである、“人材獲得にリソースをかけられない経営者”に向けて、何がベストな訴求ポイントになるのかを探っていきました。サービス特性である“短時間”なのか、“無料”なのか、それとも、両方なのか。調査していく中で、必要以上に“無料”ということだけ強調しすぎると『どこかのタイミングから、有料になるのではないか』『何か裏があるのではないか』と、ストレートに受け取ってもらえないということがわかってきたのです。ここから、短時間で採用ホームページを製作できることをいちばんに訴求すべきだと定め、クリエーティブに落としていきました。それぞれの事業フェーズで求められることが異なるからこそ、それらを磨いていけたことは、マーケターとして大きな財産になりました」(松尾氏)

キャリア形成の土台にある哲学「価値の源泉は人」

リクルート マーケティング室 中途領域マーケティングユニット 市川 泰宏氏 、 松尾 晴揮氏

両者に共通しているのは、意思をベースに自分のキャリアを戦略的に選択し、経験を積んできたこと。

「まずは自分が実現したいことをイメージするのが最初のステップですが、その形は人それぞれ。“何ができるようになりたいか”でももちろんいいと思いますし、“どうありたいか”でもいい。家族との時間を優先して仕事をセーブするタイミングもあっていいし、仕事に没頭したいタイミングだってある。10年後にどうありたいかと考える人もいれば、今の興味を優先したい人もいる。 大事なのは、誰もが最初から明確に実現したいことを持っているわけではないので、周囲とのコミュニケーションの中で、それを考えていくことだと思います」(松尾氏)

企業が利益を追求するうえで、組織の意思が優先されることは少なくない。しかし、価値創造の源泉を「人」と明言するリクルートでは、個人の意思を吸い上げ組織運営に反映する仕組みがあり、またそれを基盤に成長を遂げてきた歴史がある。

「特定の機能や事業に囲い込むことなく、さまざまな選択肢がある環境で成長を目指すほうが、高くジャンプできると思います。私自身、納得のいくステップを踏めたのも、人の成長が組織の成長につながると上司が信じてくれたからこそだと感じています」(市川氏)

ふたりとも、冷静かつ論理的に自分の現在と未来を見つめ、リクルートで自分の成長に生かすキャリア戦略を描いてきたことがわかる。絶対的なキャリアの正解がない時代、自らキャリア戦略を構築し経験を積んでいくことが、未来の選択肢を広げるための重要なファクターになるだろう。

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