NHK「虚偽字幕」はただのチェック不足ではない 「政治への忖度」に慣れきった危うい空気

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2つの事件の決定的な違いとは?(撮影:今井康一)
2001年と2021年、NHKでは公共放送の土台を揺るがす事件が起きた。
前者はETV2001「問われる戦時性暴力」の放送前、政治家の口出しを受けて番組内容が改編された事件。
後者は、東京五輪の公式記録映画を制作する監督らに密着したBS番組「河瀬直美が見つめた東京五輪」において、五輪反対デモに参加したという男性が登場するシーンで「お金をもらって動員されていると打ち明けた」と字幕がつき、その後、事実でないことが発覚した事件だ。
どちらもBPO(放送倫理・番組向上機構)がNHKを厳しく指弾し、視聴者の反発を招いた。が、2つの事件の間には、見落とすことのできないNHK内の変化がある。1月23日発売の『週刊東洋経済』は「NHKの正体」を特集した。

2022年の10月。NHKでは、15回に及ぶ講座を職員に受講させる「研修」が行われていた。その名も「リスクマネジメントブートキャンプ」。ブートキャンプは、「河瀬直美が見つめた東京五輪」の字幕問題について、BPOが「重大な放送倫理違反がある」という結論を下したことを受けてNHKが実施した再発防止策だ。

「リスクに対する知識不足」が原因なのか

研修は「BPO意見をどう受け止めるか」(第1回)に始まり、「放送ガイドラインから学ぶリスク事例」(第2回)、「ジェンダー・セクシャルマイノリティ取材で注意すること」(第3回)、「宗教・事件・・・炎上案件マネジメント」(第5回)、「よくある相談事例でリスクヘッジを学ぶ」(第10回)、「シビアなリスク案件への対応」(第12回)、「最近のリスク管理対応例から」(第15回)といったプログラムで構成されていた。

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職員に受講を呼びかける案内には「リスクマネジメントスキルを高めること」が目的であると記されていた。

しかし、あるディレクターは、局内チームズのチャットにこう書き込んでいる。

「今回のような深刻な事態が起きた原因は、PD(編注:プログラム・ディレクター)のリスクに対する知識やスキルの不足なのでしょうか」

字幕問題について、経緯を簡単に振り返る。

「河瀬直美が見つめた東京五輪」が放送されたのは2021年の12月26日(同月30日に再放送)。東京五輪の公式記録映画を制作していた河瀬監督や、河瀬監督の助手的な立場で撮影していた島田角栄監督に密着したドキュメントだった。

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