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2023年初プーチンの「起死回生」大反攻が始まるか 「勝利なし」で追い込まれた大統領のあがき

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  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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2022年12月19日にロシアのプーチン大統領(左)がベラルーシを訪問、ルカシェンコ大統領と首脳会談を行った。ベラルーシからロシア軍がウクライナに侵攻する可能性が出てきた(写真・EPA=時事)

2022年8月以降、ウクライナ軍の反攻作戦の前に追い詰められていたプーチン大統領が起死回生を狙って軍事的な賭けに出ている。東部ドネツク州の小都市バフムトを年末までに奪取するよう厳命したのに加え、2023年早々には20万人規模の追加部隊を首都キーウに向け、隣国のベラルーシから侵攻させる可能性も浮上してきた。

しかし主導権を握っているウクライナ側は、ロシア軍の動きに対応する態勢を整え始めたのに加え、南部の要衝メリトポリ奪還の本格的反攻作戦を近く始める構えだ。ウクライナ情勢は年末から2023年早々にかけ、重大な局面を迎えそうだ。

プーチン氏の焦り

プーチン氏が賭けに出た背景には、焦りがある。2022年7月以降、いずれの戦線でも国民に誇示できる「勝利」がない。本来であれば、記者会見が大好きなプーチン氏としては、年末恒例の一大イベントである「大記者会見」で2022年2月末に始めた侵攻の戦果を国民に向け滔々とぶち上げたいところだったはずだ。

しかし、大統領は会見の中止を決めた。占領地をジリジリとウクライナ軍に奪還されている現状では、会見は開けないと判断したのだろう。

「大記者会見」と言っても、実際は事前に大統領府が記者団と調整済みの質問がほとんど。プーチン氏の弁舌能力があれば、難しい質問をはぐらかすことも可能と当初筆者は見ていた。中止決定は、さすがのプーチン氏でも言い逃れのできないほど戦況が苦境にあることを端的に物語っている。

しかし、侵攻開始1年という大きな節目が2023年2月24日に控えている。プーチン氏としては、この節目までに、何らかのシンボル的な「勝利」を挙げないわけにはいかない。だからこそ、プーチン氏は是が非でもバフムトで久々の「勝利」を達成したいのだろう。できれば、他にも成果を出し、節目までに大記者会見を開いて、面目を回復したいと思っているのは間違いないところだ。

なぜなら、プーチン氏と国民をつなぐ最大のものは「戦勝」だからだ。ロシアでは「戦勝」こそが最大の国民的アイデンティティだ。従来から、自尊心を満たす歴史的出来事は何か、との世論調査でつねにトップに来る回答は、第2次世界大戦でのナチス・ドイツへの勝利だ。この事実が今もロシア国民の心情を象徴している。

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【南部バフムト攻防戦】

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