台湾有事を一変させうる「中国版HIMARS」の正体 もし数百基を作ることができれば影響力を持つ

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すると、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストの特派員がゴールドスタインのツイートに返信する形で、これは「衛士」というMLRSであり、中国版HIMARSだと指摘した(編集部注:特派員のツイートはその後、非公開になった)。

HIMARSに匹敵する命中精度も?

アメリカのHIMARSはロシア軍に対するウクライナの反撃で大きな役割を果たしている。ウクライナは8月5日、1週間で10カ所を超えるロシアの侵攻地点にHIMARSを命中させたと明らかにした。

つまり中国版HIMARSとの呼び声がある衛士には、台湾有事の際には戦況に大きな影響を与える可能性があるということだ。

ただし専門家は、そうなるには一定の条件を満たす必要があるとも指摘している。

衛士は中国版HIMARSになりうるかと本誌が尋ねたところ、ゴールドスタインはそう思うと答えた。ゴールドスタインによれば双方のシステムはとても似ているが、肝心なのは命中精度でもあるとも彼は考えている。

ゴールドスタインはHIMARSについて「他のこの種の(ミサイル)システムのほとんどをおそらく凌駕する命中精度ゆえに大成功した」と考えている。

「(HIMARSの)精度が高い理由の1つはインテリジェンスだと思う」とゴールドスタインは言う。「要するに、望ましい配置はどこかについて非常によく検討されているのだ」

一方でゴールドスタインは、衛士も「巨大な情報システム」に支えられているはずで、HIMARSに負けず大化けする可能性があるとの見方を示した。また衛士には誘導システムが使われており、HIMARSに「匹敵する精度」を備えているかもしれないという。

中国にとって衛士のようなMLRSは、その経済性ゆえに魅力的な兵器だ。大量の火器を配備したい国にとって、コストは重要な要素のはず。

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