お盆に話し合いたい「遠方のお墓」引っ越しの現実 松本明子さんがプロに聞く「墓じまい」と「改葬」
松本:いやー、よくわかります。実際にかなり大変です。ところで、お墓の引っ越しを調べると、「墓じまい」と「改葬」という言葉が出てきます。違いはなんでしょう?
明石:いまあるお墓を解体・撤去して更地にし、その使用権をお寺さんなど墓地の管理者に返還することを「墓じまい」と言います。そのうえで新たに別の場所にお墓を移すのが「改葬」、いわゆるお墓の引っ越しです。
ただし、改葬までを含めて墓じまいと言うことが多いので、その場合には二つは同じ意味で使われることになります。
松本:なるほど、そういうことなんですね。
墓石の移転はできないケースが多い
明石:もう一つ言えば、お墓の引っ越しでは、墓石の移転はできないケースが多いため、改葬=「遺骨を移転し、新たな場所で供養すること」を意味します。
松本:墓石って移さないものなんですか? お骨と一緒に移そうと思っていたのですが。
明石:お寺さんや民営の墓地では通常、墓石を扱える石材店が指定された業者に限られています。このため改葬では、いまある墓石はその墓地に出入りできる石材店が解体・撤去や処分を行い、移転後の墓石はその移転先の墓地に出入りできる石材店が建立するのが普通です。
松本:お寺や墓地ごとに出入りの石屋さんがいるので、自分でどこかの石屋さんに頼んで勝手に墓石を移すことはできないわけですね。それだと出入りの石屋さんは、墓石の撤去や処分でお金が入らないし、新しい墓石も売れなくなっちゃいますものね。
明石:そうなんです。ただし公営の墓地(公共霊園)はそうした縛りがないので、移転先の墓地管理者から許可が得られれば可能ですが、石材店次第です。
墓石の運搬には100万~300万円程度かかったり、搬送中に石が割れたりするリスクもあります。年数の経っている石を運ぶわけですから。
また、移転先の墓所の区画の寸法と既存の墓の寸法が合わない場合もあります。持っていった墓石の加工が必要だったり、外柵や墓碑などの設置ができなかったりすることもあります。
いまの墓石がどれほど立派なものであっても、持っていけばそのまま引っ越し先の墓地にポンとセッティングできるわけではないのです。