超ヒット韓国の弁護士ドラマに向けられた熱視線 自閉スペクトラム症女性「ウ・ヨンウ」が主人公

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その後も好調を維持しています。日本でもTOP10リストの1位に浮上した後、トップを独走しています。TOP10リストにランクインする国も増え続け、地域は中南米やアフリカ、オセアニアにまで広がり、その数は50か国近くに上ります。最終話の配信に向かって、さらに記録が更新されそうな勢いです。

天才的な頭脳と自閉スペクトラム症を持つ新米弁護士ウ・ヨンウ役を女優パク・ウンビンが演技で魅せる(画像:Netflix)

企画したのは「キングダム」のA STORY

優しさ溢れるドラマの世界観とは裏腹に、激しい競争に打ち勝つために利益を追求するビジネス面においても「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」は注目されています。世界配信するNetflix以上に、企画制作元である制作会社スタジオの利益を上げるビジネスモデルになっているからです。

企画したのはNetflix韓国の最初の成功例と言われる「キングダム」を手掛けた「A STORY」です。「愛の不時着」の「スタジオドラゴン」と並ぶ、グローバル展開に積極的な韓国の制作会社の1つでもあります。

関係者の話によれば、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」は予算的に大掛かりな作品ではないため当初、A STORYはNetflixではなく、韓国の地上波テレビ局に企画を持ち込んだものの断られたと言います。その理由は定かではありませんが、編成上の都合だったとか。ありがちな法廷ドラマと見られたのかもしれません。

そこでA STORYは韓国通信大手KTグループ傘下の「KTスタジオジニー」との共同制作にこぎつけ、KTグループのケーブルテレビ「ENAチャンネル」で韓国国内展開を決めます。そして、世界配信権についてはNetflixが購入するに至ります。

つまり、Netflixにすべての権利を受け渡したのではなく、権利ビジネスの采配はA STORYらが握っています。交渉が進んでいるアメリカでのリメイク化の権利も、ドラマを原作にウェブ漫画化されて得られた利益など、展開が広がるごとに企画制作元が潤うモデルです。

もともと、2次利用の権利ビジネスとして成立していたモデルではありますが、Netflixの価値も利用しながら、企画制作元も優位に立っていく新しい流れを作り出していると言えるものです。それによって、さらに良作を生み出し、次の良作へと繋げていけば、視聴者にとっても利益になる話です。「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」はそんな新たな成功事例になる力もあるのです。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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