岸田文雄首相は「成長と分配の好循環」をスローガンに掲げる。だが、もはや地球環境には、成長を支え、分配するためのパイを大きくしていく余地はない。経済成長、いわゆるGDP(国内総生産)増を目的とするのではなく、自然の限界を前提として、持続可能なペースにまで経済をスローダウンする必要がある。
理由として、現在の日本と世界が直面する中長期的な危機が2つ挙げられる。格差拡大と気候変動だ。両者は密接に関わっており、同時に解決する大胆な対策と新しい社会のあり方が求められている。
新型コロナウイルス禍は、格差の拡大に拍車をかけた。大企業の正社員が快適にテレワークで勤務する傍ら、医療・介護・保育などテレワーク不可能なエッセンシャルワーカーは、自らの健康を危険にさらしながらしばしば低賃金・過重労働に従事する。日経平均株価が一時3万円を超え、持てる者が株式投資で富を増やす一方、営業自粛となった飲食店の従業員や雇用の調整弁とされる派遣社員など、非正規雇用を中心に多くの労働者が職を失い、困窮に陥った。パンデミックという緊急事態によって、経済的弱者がより大きな打撃を受ける構造が可視化された。
コロナ禍以上に深刻な被害をもたらし、さらに多くの弱者を困窮させるのが気候変動だ。今年もドイツで洪水が起こり、山火事はトルコ、ギリシャ、米カリフォルニアと世界中で発生している。今後は食糧危機、水不足に伴う難民化など、自然的・人為的な要因が絡み世界中で混乱が起こるだろう。今回の新型コロナ禍は「気候危機の時代のリハーサル」にすぎず、人類は慢性的な緊急事態に突入する。
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