「これまでの10年のメガトレンドはモバイルだった。ここから10年はモビリティーだ」。ソニーグループの吉田憲一郎社長は、2020年1月の米ラスベガスでの見本市「CES」で電気自動車(EV)の「VISION-S(ビジョンエス)」を公開して以来、この言葉を経営方針説明会などで何度も繰り返している。
2010年代に、モバイル通信はフィーチャーフォンからスマートフォンへと移行した。それに伴い商品やサービス形態にとどまらず、プレーヤーや業界も激変した。
吉田社長は今後10年でモビリティー、すなわち自動車業界で似たような変化が起きるとみる。ガソリン車からEVへのシフトは、エンジンなど単なる鉄の塊だった自動車が、電化されてネットに接続した乗り物に移行することを意味し、自動車の定義が大きく変わろうとしている。
こうしたメガトレンドの中で、米アップルや中国ファーウェイなどが続々とEVへの参入をもくろむ。ビジョンエスも昨年12月から欧州の公道で走行実験を行う開発段階まで来ているが、開発を担当したソニーグループ常務でAIロボティクスビジネスグループ部門長の川西泉氏は、「今のところ量産の予定はない」と話す。車体を量産しないとすると、どこに商機があるとみているのか。
ビジョンエスは、世界首位のシェアを誇るイメージセンサーをはじめ、LiDAR(レーザーによる測距センサー)、スマートフォン「Xperia」で培った技術を生かしたダッシュボードなど、ソニーが持つ技術を結集して造られた。車載用のセンサーはすでにトヨタ自動車や日産自動車の車載カメラ向けに供給されている。
ただ、こうした部品を切り売りすることだけが開発の最終的な目的ではなさそうだ。川西氏は「EV化の中で大きな技術的課題になっているのが、車の電気系統をどう再構築していくかだ。技術的に非常に面白い領域であり、うちもこうした取り組みを行っている」と明かす。まだ試行錯誤を繰り返している段階というが、そこでソニーの強みを発揮できる可能性が高いとみているのだ。
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