旧ソ連時代のアルメニアの作曲家アラム・ハチャトゥリアンの名は、フィギュアスケートの浅田真央選手が2010年のバンクーバーオリンピックで使用した『仮面舞踏会』のワルツとともに思い出される。優雅なメロディーを聴くたびに、浅田選手の美しい氷上の姿が目に浮かぶ。
ハチャトゥリアンの代表作といえば、第2次世界大戦下で書き上げられたバレエ『ガイーヌ』の終幕で演奏される『剣の舞』だろう。現在上映中の映画『剣の舞 我が心の旋律』では、この強烈無比な作品の誕生秘話が興味深いエピソードとともに描かれる。
何より印象的なのは、旧ソ連の過酷な体制下における音楽家たちの姿だ。作品には、1903年生まれのハチャトゥリアンと同時代の作曲家ショスタコーヴィチやバイオリンの巨匠オイストラフも登場し、彼らが生きた時代の緊迫感が臨場感たっぷりに語られる。そして、この作品をさらに深く理解するために押さえておくべきポイントが、ハチャトゥリアンの祖国アルメニアの歴史だ。
19世紀末から20世紀初頭にかけて行われたトルコによるアルメニア人大虐殺の暗い歴史。世界がそれを黙殺したことに対するアルメニア人の怒りと悲しみは根が深い。ファシズムの誕生と後のユダヤ人虐殺にもつながるこの出来事へのハチャトゥリアンのいら立ちは、映画でも明確に描かれている。高く硬い音で木琴が激しく連打され、サキソフォンがエキゾチックに響く名曲『剣の舞』は、こうした背景から生まれたのだ。
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