近代文明を支える結束は不信、誤解、恐怖によって崩壊する。1914年に起こった出来事だ。その夏、欧州は戦時体制に染まっていった。2020年も似たような状況にあるのかもしれない。1918〜20年のスペイン風邪以来となるパンデミックは、世界的な構造危機へと急速に変異しつつある。冷戦後で最も危険な地政学的衝突が勃発するリスクが高まっているのだ。新型コロナの感染が広まると、世界の3分の1が封鎖され、大恐慌以来の不況となった。危機が今後どう展開するかは世界的な指導力に懸かっているが、世界にはその指導力がない。
国際協調に新たな道を開くには3つの誤解を正さなくてはならない。第1に、コロナをブラックスワン(想定外の事態)と位置づけるのは事実に反する。危機がここまで深刻になったのは、世界が専門家らの警告を無視して行動を起こさなかったからだ。そして来る気候変動では、おそらく世界はもっと巨大な危機にさらされることになる。それに比べたら、コロナなどほんの予行演習にすぎない。
コロナ禍でグローバル化の間違いが証明されたというのも事実にそぐわない。世界中の科学者がワクチン開発で協働できているのは、グローバルな学術コミュニティーや情報通信技術のおかげだ。同じ目標のために、これほど多くの人々が国境を超えて協力するのは、かつてなかったことでもある。
第3に、現状の政策手段や制度でこの危機を乗り越えられると独り合点するのも問題だ。現実には国際機関が使える資源はまるで足りておらず、このウイルスと経済の二重危機に立ち向かうには多大な知恵と巨大な努力を必要とする。
何もしないことの罪
課題は大きく5つある。第1に、世界をまとめるリーダーシップだ。米中の対立が激化し、世界貿易システムなどの多国間枠組みは瓦解しつつある。そうなった以上、米中以外の主要国は協力して問題解決の道を探らなくてはいけない。とりわけ欧州連合(EU)、英国、日本、カナダ、インドネシア、インド、韓国、ブラジルはもっと大きな責任を引き受けてしかるべきだ。
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