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コロナ後の生き方、ウイルスとは共存するしかない 寄稿|青山学院大学 教授 福岡伸一

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  • 福岡 伸一 生物学者、青山学院大学教授、ロックフェラー大学客員教授

今から100年以上も前の1918年6月、米国・ニューヨーク市にあるロックフェラー医学研究所の所員だった野口英世は南米エクアドルの商都グアヤキルに急行した。黄熱病が発生し、混乱を極めていたからだ。野口は患者から得た試料を培養し、顕微鏡観察によって、スピロヘータと呼ばれる細菌に似たらせん状の病原体を発見。これをレプトスピラ・イクテロイデスと命名した。その結果を基に“野口ワクチン”を開発したのだ。野口の早業に、エクアドルの人々は称賛を送った。

ふくおか・しんいち 1959年東京都生まれ。京都大学卒業。京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授・ロックフェラー大学客員研究員。著書に『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』など。

現在、ロックフェラー医学研究所は、大学院大学となって世界的な生命科学の拠点となっている。私も客員研究者を務めているが、現在大学内で野口の名前を知っている同僚は日本人以外ほとんどいない。というのも、華々しい野口の発見のほとんどが科学史の検証に堪えることがなかったからである。黄熱病の原因はウイルスであり、ウイルスは野口が使っていた顕微鏡では見ることができない極小の粒子だった。野口の死後、1930年代になって電子顕微鏡が登場して初めてウイルスの存在が立証された。

現在、世界中に瞬く間に広がった新型コロナウイルス禍もまた、現代科学の進展が生み出した混乱といえる。ゲノム科学によってウイルスの遺伝子構造が瞬時に解析されなかったなら、また、ウイルス遺伝子を高感度で検出するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査が普及していなかったなら、騒ぎはここまで混迷を深めることはなかった。重症化する肺炎患者が例年に比べてやや多いのではないか、といった観測しかできなかっただろう。

知ることの速度と感度が急上昇する一方で、ならばどうすればよいか、という対処の科学はほとんど進展していない。よく手を洗って、マスクを着け、なるべく人との接触を減らしましょう、というのは100年前の対策とほとんど変わるところがない。それは、ウイルスとは“共存”するしかないからである。

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